「空き家特措法」を適用した行政による強制解体、全国で始まる

更新日2016年01月01日

国土交通省が2015年5月に施行した「空き家等対策の推進に関する特別措置法」(以下「空き家特措法」)を適用した空き家の取り壊しが、神奈川県横須賀市などを皮切りに全国各地で始まっている。

’15年10月26日に横須賀市で解体された空き家は、同市浦賀1丁目にある平屋の家屋(延床面積約60m²)。3年ほど前に周辺住民から、老朽化が進み危険だとの苦情が寄せられていたが、所有者の特定が登記簿調査などでは難しかった。昨年には建築基準法に基づく取り壊しも検討したが、やはり調査に限界があり、断念。しかし「空き家特措法」の施行を受け、該当家屋に関する固定資産税の納付情報などを市が把握したところ、誰も税金を払っていない所有者不明の住宅であることが分かった。そこで同市は、9月1日に「公告」というかたちで該当家屋を「特定空き家」に認定。所有者に「10月21日までの除却(解体)」を命じ、「除却されない場合は行政で除却する」ことを市の公報を通じ告知した。その後、期日までに所有者は現れず、公告どおり空き家は解体された。

「空き家特措法」の2条2項によれば、「そのまま放置すれば倒壊等著しく保安上危険となるおそれのある状態又は著しく衛生上有害となるおそれのある状態、適切な管理が行われていないことにより著しく景観を損なっている状態その他周辺の生活環境の保全を図るために放置することが不適切である状態にあると認められる空家等」が、「特定空き家等」と定義され、行政代執行の対象となる。

今回の空き家の解体費用約150万円はすべて市が負担。同市内には約28,000戸の空き家があり、そのうち特定空き家は約60戸。今後、3戸の代執行を予定している。

住民の安全を守り、行政の負担を減らすために、横須賀市はモデル地区限定の「空き家バンク」を立ち上げるなど、空き家の有効活用にも注力。全国各地でも同様の取り組みが活性化しており、今後の動向を注視したい。

MONTHLY NEWS (建築知識2016年1月号)

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