第10回 数字で読む建築基準法 今月の数字「1/2」
斜線制限の緩和のほか 面積、階の算定にも
ビューローベリタスジャパン 高柳公一

更新日2016年06月01日

建築基準法にかかわる数字を拾い出してきた本連載も今号で最終回となる。最後は緩和規定などによく登場する分数「1/2」で締めくくろう。1/2は斜線制限などの緩和条件、あるいは面積や階に含むかどうかの判断基準などに登場する。今回は代表的な条項について解説する。

1m以上の高低差、広場等への隣接する場合

道路・敷地・北側に関する斜線制限では、地盤面に高低差がある場合や敷地が公園や水面などに接している場合に緩和措置が定められている。

道路斜線については、敷地の地盤面が前面道路より1m以上高い場合に緩和措置がある[令135条の2第1項]。道路斜線の条項[法56条]をそのまま適用すると、計画できる建物の範囲が著しく不利になるからだ。

具体的には「(敷地と前面道路の高低差−1m)×1/2」の分だけ、前面道路が実際より高い位置にあるとみなすことができる。例えば2mの高低差がある場合は、(2m−1m)×1/2から算出した50㎝分だけ実際よりも高い位置に前面道路があると想定して[※1]、道路斜線を計算する[図1]。

隣地との高低差については、隣地斜線と北側斜線の緩和措置がある[令135条の3第1項2号、令135条の4第1項2号]。対象となるのは道路斜線とは逆に、敷地の地盤面が隣地より1m以上低い場合[※2]。計算方法は道路斜線の場合と同じで、「(隣地との高低差−1m)×1/2」の高さだけ敷地が実際より高い位置にあるとみなす[図2]。

隣地斜線と北側斜線については、公園や水面など広い場所に敷地が接している場合の緩和措置もある。隣地斜線や北側斜線の起点となる隣地境界線[※3]が、隣接する公園や水面などの幅の1/2だけ外側にあるものとみなす[令135条の3第1項2号、令135条の4第1項1号]。気をつけたいのは隣地斜線と北側斜線では緩和の対象が異なる点だ。隣地斜線では、隣地が「公園、広場、水面その他これらに類するもの」が対象になる[図3]。一方、北側斜線の緩和対象は「水面、線路敷きその他これらに類するもの」。北側斜線は日照の確保を目的とするため、公園や広場は含まれない[図4]。

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開放廊下の条件

吹きさらしの廊下の面積を算定する際にも、1/2にまつわる除外規定がある。令2条1項3号に関する通達に登場する内容で、一定条件を満たした場合に、吹きさらし廊下の一部の面積を床面積から除外できる[図5]。

緩和の条件は、①外気に有効に開放されている部分の高さが1.1m以上、②外気に有効に開放されている部分の高さが当該廊下の高さの1/2以上、の2つを満たしていること。条件を満たす吹きさらし廊下は、外側の手摺壁などから幅2mまでの部分を床面積に算入しなくてよい。バルコニーや屋外階段でも同様に計算する。なお、床面積に含めるかどうかは階ごとに判断する。屋外階段の場合、防犯のため下階では閉鎖的な仕様とし、上階で外気に開放している例が多い。こうしたケースでは、上階は床面積の算定から一部除外できるかもしれないが、非開放の下階では階段全体を算入する場合がある。

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小屋裏等物置の水平投影面積

最後に、階とみなされない小屋裏物置等について。一定規模以内の空間であれば階とみなさず、当該部分は床面積に算入しないという規定だ。具体的な条件は技術的基準で示されており、細部は特定行政庁等に確認しておくとよい。

床面積から除外できる条件のうち、「小屋裏物置等の最高の内法高さが1.4m以下」などは、よく知られた規定だろう。一方、見逃しがちなのが、水平投影面積の規定だ。床面積の算定から除くには、小屋裏物置等の水平投影面積が当該階床面積の1/2未満であることが求められる。小屋裏物置等の水平投影面積は、図6のように、その余剰空間が属する階ごとに合計する。特に中間階では、上下階それぞれの床面積未満でなければならないので注意が必要だ。

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※1 道路斜線の高さを測る起点は道路中心線とする
※2 北側に前面道路がある場合、前面道路を介して向かい側にある隣地が対象となる
※3 北側に前面道路がある場合は、前面道路の反対側の道路境界線を指す

高柳公一
1979年生まれ。2008年ビューローベリタスジャパン入社。
建築確認審査部川崎事務所アクティングテクニカルディレクター

数字で読む建築基準法(建築知識2016年2月号)

建築知識研究所

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