建築物省エネ法マニュアル 第3回
規制措置の手続きをマスター

更新日2017年09月29日

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本年4月1日に施行された建築物省エネ法の「規制措置」では、「届出」と「省エネ基準適合義務」(省エネ適合性判定)の2つの手続きが規定されている。今回は、その手続きについて解説する。対象となる建築物は一部の建築物を除き[表]手続きが必要になるので、しっかりと理解しておきたい[図1・図2]。

300㎡以上の新築・増改築は着工の21日前までに届出を

届出の対象となるのは、300㎡以上の建築物の新築と増改築だ。建築主は、着工の21日前までに「届出に係る省エネ計画」[※1]を所管行政庁に提出する。ただし、2千㎡以上の非住宅部分[※2]を有する場合は、後述する省エネ適合性判定が必要になる。「旧エネルギー使用合理化法」(改正前のエネルギーの使用の合理化等に関する法律)でも届出義務は課せられていたが、新しい建築物省エネ法では、修繕・模様替えや、空気調和設備等の設置・改修が対象から除外された。また、省エネ措置の届出事項にかかわる維持保全状況の定期報告制度は、廃止された。

届出に適用される基準は「建築物エネルギー消費性能基準」といい、「一次エネルギー消費量基準」と「外皮基準」の2つの指標がある。このうち外皮基準は住宅部分のみに適用される。

なお「届出に係る省エネ計画」が基準に適合せず、所管行政庁が必要があると認めるときは、届出受理後21日以内に省エネ計画の変更等の指示、命令を受けることになる。

届出した省エネ計画の内容に変更が生じた場合は、変更にかかわる届出を所管行政庁に対して行う。ただし、変更後も省エネ基準に適合することが明らかな場合は「軽微な変更」として取り扱われ、変更の届出は不要となる。

省エネ適合性判定は変更がある場合の扱いが異なる

省エネ適合性判定の対象は、「特定建築行為」[※3]に該当するものだ。建築物省エネ法11条により、建築主は、所管行政庁または登録省エネ判定機関に省エネ適合性判定の申請を行い「省エネ適合判定通知書」の交付を受ける必要がある。また、この基準適合義務は、建築基準関係規定とみなされており、省エネ適合判定通知書がなければ確認済証の交付を受けることができない。省エネ適合性判定で適用される基準は、建築物エネルギー消費性能基準の一次エネルギー消費量基準だ。

省エネ適合性判定の申請では、「省エネ計画」[※4]を作成し提出する。この申請は、建築確認と同一の機関(登録省エネ判定機関かつ指定確認検査機関)に申請することも可能。ただし、同一機関に申請する場合でも、確認申請図書と省エネ適合性判定図書の兼用はできない。1つの確認申請に、複数棟の適合義務対象建築物がある場合は、対象建築物の数だけ適合判定通知書の交付を受ける必要がある。敷地単位で行う建築基準法の確認申請とは取扱いが異なるので、注意してほしい。

適合義務対象建築物に300㎡以上の住宅部分を含む複合建築物を登録省エネ判定機関に申請する場合は、「正、副」と併せて「写し」を添付する。これは、住宅部分の審査は所管行政庁が行うためである。この場合、登録省エネ判定機関から所管行政庁へ写しなどが送付されるため、建築主が書類を別途作成し所管行政庁への手続きをする必要はない。

適合判定通知を受けた後に省エネ計画の内容に変更が生じた場合は、「軽微な変更」に該当する場合を除き、当該工事に着手する前に変更後の計画を改めて所管行政庁または登録省エネ判定機関に申請し、省エネ適合判定通知書の交付を受けることになる。

改めて省エネ適合性判定を受ける必要がない「軽微な変更」とは、省エネ性能を向上させる変更や変更後も適合することが明らかな変更とされており、具体的には、以下の3つのルートが示されている。「ルートA:省エネ性能が向上する変更」、「ルートB:一定範囲内の省エネ性能が低下する変更」、「ルートC:再計算によって基準適合が明らかな変更」だ[※5]。ルートAまたはBの場合は、建築基準法に基づく完了検査の申請時に「軽微な変更説明書」を提出し、その確認は建築主事または指定確認検査機関が行う。一方、ルートCの場合は、所管行政庁または登録省エネ判定機関に申請し、「軽微な変更該当証明書」の交付を受ける。完了検査の申請時には「軽微な変更説明書」と「軽微な変更該当証明書」を併せて提出する。用途の変更や評価方法の変更などは軽微な変更に該当しないため、改めて省エネ適合性判定を受ける必要がある。

※1「届出に係る省エネ計画」(エネルギー消費性能の確保のための構造及び設備に関する計画)では、届出書(正、副)に、設計内容説明書や各種図面、計算書などをまとめた添付図書2部を添えて提出する
※2一戸建ての住宅、長屋、共同住宅、寄宿舎、下宿を「住宅部分」とし、これら以外を「非住宅部分」として扱う
※3非住宅部分が2,000㎡以上の建築物(特定建築物)の新築のこと。このほか、特定建築物の増改築(非住宅部分の増改築の規模が300㎡以上)、特定建築物以外の建築物の増築(非住宅部分の増築の規模が300㎡以上で、増築後に特定建築物となるもの)なども含まれる
※4「省エネ計画」(建築物エネルギー消費性能確保計画)は、計画書(正、副)に、設計内容説明書や各種図面、計算書等をまとめた添付図書2部を添えて提出する
※5軽微な変更に該当するこれらのルートについて、具体的な内容は今後の連載予定

省エネ適合性判定の対象建築物は、建築基準法にもとづく完了検査時に、省エネ基準に適合していることも検査の対象となります。

ビューローベリタスジャパン 渡邊仁士
2005年ビューローベリタスジャパン入社。建築確認審査部技術課

建築物省エネ法マニュアル(建築知識2017年4月号)

建築知識研究所

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