徹底解説[ 断熱 ]前 真之氏(東京大学大学院 工学系研究科 建築学専攻 准教授)(3ページ目)

更新日2014年12月01日

断熱性能を最も左右する開口部

─断熱性、気密性を向上させるうえでほかに考慮すべき点を教えてください。

住宅で最も断熱性能を左右するのは、窓などの開口部だと考えています。開口部のU値は天井や床、壁にくらべて極端に大きいのです[図5]。たとえば改正省エネ基準の東京都(地域区分「6」地域)のU基準値は0・87です。それがアルミサッシ+単層ガラスの開口部では4・65以上になります。天井や壁、床は0.7を切りますから、開口部がいかに足を引っ張っているかが分かります。最近はU値1.0以下の国産トリプルサッシが商品化されています。実際の設計では、樹脂サッシ、木製サッシ、樹脂アルミサッシのいずれかにLow-e複層ガラスを組み合わせた2・33以下の窓を採用してほしいと思います[図6]。

窓などの開口部の面積が大きくなればなるほど、家全体の断熱性能は下がります。つまり明るく開放的な家にしたければ寒くなり、暖かい家にしたければ暗くなるのです。もし大きな開口部と快適性を両立させたいなら、性能の高い窓を選ばなければなりません。当然費用も高くなります。建築主と断熱性の話をする際は、このトレードオフの関係をよく理解してもらうよう努めるべきでしょう。

─設計段階で間取りや耐震性ばかりでなく、断熱性に関しても建築主としっかり話し合うべきということですね。

かつての住宅は断熱材が入っていないスカスカの状態が当たり前でした。しかし今はどの家もある程度の断熱性・気密性は確保しています。インターネット時代の現在ですから、多くの建築主がそのことに気づいています。だからアンケート結果にあるように、住んでから「こんなに寒いとは」とがっかりするのです。このようなことにならないよう、事前にどのレベルの断熱性能を希望するのか、そのためにどのくらいの金額を費やして、どの部分を我慢するのか、などを十分に話し合うべきです。後々のクレームにならないためにもここはしっかり押さえておきたいところではないでしょうか。

図5現行の仕様基準における熱貫流率の基準値(6地域)

4 開口部のU値は壁などに比べて極端に大きくなっている

図6省エネ建材等級表示区分

4 ※5:Uw値とは、窓の熱貫流率のこと
彦根 アンドレア
P r o f i l e
前 真之
(まえ まさゆき)
  • 1975年生まれ。
  • 1998年東京大学工学部建築学科卒業。
  • 2003年同大学大学院博土課程修了。
  • 2004年建築研究所などを経て、29歳で東京大学大学院工学系研究科客員助教授に就任。
  • 2008年同建築学専攻准教授。
  • 空調・通風・給湯・自然光利用など幅広いテーマを研究し、真のエコハウスの姿を追い求めている。現在、暖房や給湯にエネルギーを使わない無暖房・無給湯住宅の研究・開発に取り組んでいる。
建築知識研究所

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