震災から4 年、復興はどこまで進んだか

更新日2015年04月01日

進まない住宅の再建

東日本大震災から4年が経過した。国が集中復興期間[※]としたのは2015年度までの5年間。この間に26兆3,000億円という膨大な復興予算が投入される予定だが、その用途は道路整備や鉄道の復旧などのインフラ工事が中心であり、被災者の生活の基盤となる住宅の再建には十分に結びついていないのが現状だ。

被災地では現在、自力で住宅を再建できない人のために災害公営住宅の建設が進められており、全体で2万9,900戸の整備が計画されている。国土交通省によれば、計画のうち半数を超える1万6,000戸がすでに着工しているものの、これまでに完成したのは5,582戸(2015年1月時点)と、依然として計画の19%に留まっている。特に岩手・宮城・福島の3県では、津波の被害を防ぐためのかさ上げや造成が必要な土地が多いため、建設に時間がかかっている。結果として、当初国が2年と想定していた仮設住宅入居期限は延長を繰り返し、現在も8万人余りの被災者が仮設住宅での生活を余儀なくされている。

※政府が復興期間として定めた10 年間(2011 ~ ’20 年)のうち、国が復興費用のほぼ全額を負担し、25 兆円の予算枠が確保された初めの5 年間を指す


復興を阻む慢性的な人手不足

これほどまでに復興が遅れる原因として常に存在するのが、建築現場で働く職人の不足という問題だ。その一方で、「人手不足が深刻さを増すのはこれからだ」と指摘する声もある。

震災直後から、がれきの再資源化をはじめとした復興支援を続ける岩手県立大学内田信平准教授は「今年9月ごろに向けて宅地造成の完了が相次ぐことにより、公営住宅の建設と、自立再建の要望が同時期に殺到することが予測されます。既に公営住宅の受注で手一杯の工務店が多く、自立再建の要望に応えきれない事態になりつつあります」と明かす。さらに、内田氏が復興活動を行う岩手県宮古市の地元建設会社や木材事業者は、東北圏内での賃金格差に悩まされているという。「賃金の高い都市部の案件に人が集中し、宮古市まで人手がまわってこないのです。かと言って、地元の工務店が現状に応じて雇い入れれば、復興需要の退潮とともに、いずれは人員過多による経営難が目に見えています」(内田氏)。遠方からの人員調達はかえって工賃の高騰を招く。現在内田氏の所属する復興支援団体は、平日は宮古市で働き、週末は実家に帰ることが可能な距離からの人員調達を検討しているところだという。


復興を機に団結、地元工務店の試み

被災地の工務店は、慢性的な人手不足と長期的な視点での経営維持という課題の板挟みに悩まされている。こうしたジレンマを解消すべく、工務店が協同した例もある。石巻地元工務店協同組合はその1つだ。地元工務店単体では企業規模が小さくまとまった受注が難しいため、組合として住宅を受注し、組合各社で工事を分担するという仕組みだ。現在、同組合には地元工務店68社が加入しており、市と協定を結んで公営住宅の建設を行っている。

組合の結成にともない、地元同業者間の関係にも変化があったという。「震災前は石巻という限られた地域のなかで仕事を奪い合っていた工務店各社でしたが、組合設立のおかげで、業界の風通しがよくなりました。現在組合で行われている材料の共同購入や、複数社間の職人の融通など、以前は考えられませんでした」。と、同組合に所属するヒノケンの日野節夫社長は話す。現在、同組合が手掛けるのは公営住宅の建設がメインだが、これがひと段落するころには自立再建の要望にこたえていくと同時に、学校施設といった中規模公共施設修繕への参入も視野に入れ、活動を続けていくという。


住民本位の復興を

地元工務店の尽力もあり、仮設住宅には空き部屋も多くなった。しかし、宮城・岩手・福島の3県に建設されたプレハブ仮設住宅計約5万3,000戸のうち、今年1月までに撤去されたのは全体の1%にも満たない。仮設住宅は長屋タイプが大部分を占めているため、1棟すべての住民が退去しなければ撤去できないからだ。校庭が仮設住宅に占拠され、いまだ本来の用途で校庭を使用出来ない学校も多く存在する。居住者が少なくなった仮設住宅は取り壊してひとまとめにしていくことが必要だが、同時に、移転を強いられる住人への配慮も重要だ。

今回取り上げた復興の現状は被災地の抱える問題のほんの一面にすぎないが、同じ復興事業であっても、場所や立場が変われば、抱える問題が異なることが分かる。しかし、復興に当たっての最優先課題は「被災者の生活再建」であることは共通しているべきだ。生活再建のために、的確な予算措置と迅速な事業の実施に加え、個々のケースにきめ細かく対応する態勢づくりが不可欠だ。震災から5年目を迎えた今、そうした認識を再確認する必要がある。

MONTHLY NEWS (建築知識2015年4月号)

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