長期化必至 東洋ゴム工業の改ざん問題

更新日2015年06月01日

東洋ゴム工業(大阪府)が免震装置のゴムの性能を示すデータを改ざんした問題について、その詳細が明らかになりつつある。国土交通省は4月21日、国の性能基準を満たさない免震装置のゴムが使用された建物は、計154棟になったと発表した。ゴムの性能を示すデータの改ざんは1996年から繰り返され、担当社員4人が関与した疑いがあるという。外部調査チームは、4月24日に公表された中間報告において、改ざんが可能だった背景として、上司に十分な専門知識がなく現場任せにされていたとの事情を指摘した。

問題の詳細が明らかになりつつあるものの、解決までの道のりは険しい。問題が発覚しても、竣工した建物である場合、撤去や利用停止は容易に決断できない。今後の再発を防ぐためには何が求められるか、実際に該当製品を採用した経験のある構造設計者に話を聞くことができた。「製品の採用において重視するのは、あくまで性能とコストのバランスです。すべての材料は法37条[※]に定める規定をクリアしており、その信頼のもとに採用しているため、品質そのものについて疑うことはありませんでした」と話す。

ただし、法37条に基づく性能評価は、専門家が審査を担当しているものの、評価材料は書類が中心で、“各社の提出する書類に虚偽はない”という性善説を前提に、審査通過の是非を決めているのが実状である。今後はより実証を中心にした審査に切り替える必要があるだろう。

「私たちは検証経過や審査資料について知りえず、流通した製品を通して、性能評価の結果のみを知るのです。これまで目にしてきた製品情報に虚偽があったとしても気付きようがありません。それだけに、性能評価の果たす役割は大きいと言えます。当社では、該当建造物の所有者の意向を確認して、基準を満たす製品と交換することになりますが、東洋ゴム工業から直接の説明はまだありません。年単位の長い期間をかけて解決していくことになりそうです」(前述の構造設計者)。

MONTHLY NEWS (建築知識2015年6月号)

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