特別対談 第2回 伊礼 智×鐘撞正也(2ページ目)

更新日2015年08月26日

工務店とよい関係を築くとよい仕事ができる

伊礼 智(いれい・さとし) 伊礼 智(いれい・さとし)

伊礼智設計室

鐘撞─私は住宅業界全体を俯瞰的に見て、設計と施工は分離し、きちんと産業として成り立つ土台をつくっていきたいと考えています。そこでよく思うのは、内向きになって設計を追求していては、設計事務所は廃れてしまうということです。

伊礼─そうですね。僕はもともと、OMソーラーを考案した奥村先生の研究室出身なので、それがきっかけで工務店に知り合いが増え、独立後も一緒に仕事をしてきたことがよかったと思っています。施工の勉強になりますし、彼らは設計が苦手なので、互いの欠点を補い合えますから。工務店と手を組むと、けっこうよいものができるのです。

鐘撞─工務店とよい関係を築けている設計者って、あまりいないですね。工務店にとっては、工事が始まる前にすべてを決めてあったほうがいいのですが、意外とそれができない。

伊礼─そのようですね。現場で変更を出す設計事務所はすごく嫌がられます。変更した分のお金を払わないし、何かあっても責任を取らないということが多いですから。僕が先輩から教わってきたのは、設計する段階でしっかりと検討したうえで、図面をきちんと描いて、現場が始まったらできる限り変更を出さないこと。責任を明確にして、工務店に迷惑をかけない。これはとても大事なことだと思っています。

ブログやHPを活用し仕掛けづくりを

鐘撞─私はホームページを活用していますが、伊礼さんはブログをやっていらっしゃいますね。

伊礼─僕がブログにこだわるのは、興味をもった人だけが見てくれるからです。ブログを見て、こんな家をつくりたいというメールを頂くことが多いです。

鐘撞─建築家としての伊礼さんの考え方を伝えることで、それに共感する方が集まってくるのですね。当社ではSNSもやっていまして、一般の方も、当社の設計士も参加できるコミュニティをつくっています。たとえば、猫好きの人が集まるコミュニティであれば、猫と暮らす家が得意な設計士もいますから、猫好きの方が家を建てたいとなったときに「あの人ならいい家をつくってくれそう」と思ってもらえます。

伊礼─面白いですね。

鐘撞─設計者としては、事務所の経営もありますが、「お客様のために」ということを一番に考えることが大切です。あとは自分が得意なものを発信していけば、誰かが興味をもってくれると思っています。

伊礼─それはありますね。ときどき事務所でご飯をつくってブログに写真をアップすると、意外と反響があったりします。

鐘撞─それも興味をもってもらえる1つのきっかけですね。ブログやホームページなど、そういったツールをどうやって設計の依頼につなげるのかが重要ですね。

伊礼─住宅建築家として自分がありたい理想や方向というのがあり、一方で、所員が生活できるようにきちんとした給料も払わなければいけません。そこのバランスをうまくやっていくことが大切なのだと思います。

鐘撞─私にとって伊礼さんは大先輩ですが、考え方が近いところや共通点も大いにあると感じます。今後も質の高い住宅づくりに一緒に取り組んでいければと思います。

伊礼 智×鐘撞正也

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