新国立競技場建設計画、白紙撤回 工費縮小に向けて動き出す
更新日2015年09月01日
2020年東京オリンピック・パラリンピック競技大会のメインスタジアムとなる新国立競技場の建設計画の白紙撤回が7月17日に決定した。現在、政府は9月中の新計画の決定、およびその公表に向け、調整を行っている。今回、政府が白紙撤回に踏み切った背景として大きかったのは、2,520億円という総工費に高まった批判の声を看過できないと判断したことだった。
2012年のデザインコンペの際に1,300億円を見込んでいた総工費は、ザハ・ハディド氏のデザイン案の採用が発表された後、3,000億円となる試算が2013年10月に明らかにされた。その後(2014年5月)、JSC(日本スポーツ振興センター)が規模を縮小した新デザイン案として1,625億円の概算工事費を公表したものの、2015年の春には再び3,000億円を超えるとの見通しが示された。さらにその後、6月にいったんは2,520億円で決着、着工する運びと思われたが、当初の工事費の2倍近い金額に世論の批判が沸騰した結果、白紙撤回やむなしの流れとなった。
工費縮小を大前提とする再計画の策定に向けスタジアム機能を見直す動きが各方面で出はじめている。7月30日、建築家の槇文彦氏らのグループが、2万5,000人分の客席を仮設とし、常設の収容人数を5万~6万人に抑えるべきとの見解を発表した。槇氏はこの意見を政府に提言する意向とのことである。なお、8万人規模のスタジアムは、サッカーワールドカップの単独開催を目指す日本サッカー協会が切望し要請していた計画である。政府は、日本陸上競技連盟から要請が出されていたウォーミングアップ用の常設サブトラックの設置を見送り、仮設とする方針も固めている。工費縮小に伴う機能面のコンパクト化は今後さらに検討されることが予想される。スタジアムの計画が最終的にどのようなかたちに落ち着くのか、デザインだけでなく機能面においても、今後大幅な変更がなされるだろう。政府による9月の新計画が注目される。
MONTHLY NEWS (建築知識2015年9月号)