徹底解説 [ 屋根 ] 彦根アンドレア氏(彦根建築設計事務所)(2ページ目)

更新日2015年09月28日

屋上緑化や太陽光発電を積極的に取り入れる方法

─建築主がルーフテラスやルーフガーデン、屋上緑化を希望するケースもあると思います。
その際の注意点などを教えてください。

屋上緑化の場合は屋根を傾斜させ、土の厚さを変えながら植物を植える地面をフラットにします[図1]。すると、断面図を見ると分かるように、地面の下に三角形の空間ができます。傾斜があるため、水は自然に排水溝に流れますから、フラットルーフにありがちな水の滞留という心配がありません。水が溜まらないので、植物の根が腐ることもありません。土が深い部分には根がよく伸びる背の高い樹木を植えることができますし、浅い部分には背の低い草花や芝を植えるとよいでしょう。ルーフガーデンを生かすには、土の分量と水はけが重要なのです。

パラペットと植物との距離にも注意が必要です。枝や根っこ、落ち葉などが排水溝をふさがないようにしなければなりません。また、パラペットの防水の仕方も重要です。パラペットに笠木を付け、外側まで防水を施します。きちんと水切を施すことが水の浸入を防ぐのですが、水切の見付け寸法をできるだけ小さくしたいと考える設計者もたくさんいます。しかし、あまり小さいと吹き上げによって雨水が入ってきてしまう可能性があります。

デザイン的に小さくしたいのであれば、笠木の処理をきちんと行うことが大切です。でも、水切の見付け寸法を小さくすることよりも、住まい手に長く安心して、気持ちよく住んでもらうことのほうが、ずっと大切なのではないでしょうか。見せたくなければ、けらばや樋同様、同じ色・素材にして目立たなくするなどの工夫をすればよいのです。

─太陽光発電パネルを設置する場合には、どんな点に気をつければよいでしょうか。

太陽光発電パネルは、予算的に可能であれば設置するようにお勧めしています。自分で使う電気は自分でつくる、というのが私のポリシーです。設置するときのポイントは、なるべく目立たないようにすることでしょうか。もしくは、見えても気にならないように載せます。海を眺めるように西向きに開いた家では、陸屋根にして、パネルを波打つような形に見えるように設置しました[写真5]。パネルの角度は 30°で、それぞれが重なって陰にならないように気をつけます。また、周囲の建物や樹木の陰にならないかをチェックしておくことも大切です。



光と風を取り入れるトップライトを活用する

─屋根と窓との関係は、どのようにお考えですか。

屋根にトップライトを設けて、高いところから室内に光を落とす手法は、よく用います。トップライトを設置する場合は雨水が溜まらないように、傾斜屋根にする必要があります。屋根ですから、いったん設置してしまうとなかなか直せません。安全性は特に重視して、信頼できる製品を選ぶようにしています。もちろん断熱性能も重視します。

ハイサイドライトの場合は、天井や壁を白くして反射板として使うと効果的ですが、明るさからいえばトップライトのほうがお薦めです。その建物の仕上げとスタイルによって選ぶとよいと思います。

また、トップライトやハイサイドライトは換気にも有効です。日本の伝統建築でも、越屋根のように屋根に換気装置を設ける例があります。屋根や屋根に近い位置に開く窓があることは、快適な内部空間を実現するために大切なのです。低い窓から風を入れて自然な空気の流れをつくり、開閉可能なトップライトやハイサイドライトから空気を抜きます[写真6]。トップライトには、雨センサーが付いていて人がいないときでもにわか雨が降ると自然に閉まる製品もあり、お薦めです。

美しい屋根をつくり、長もちさせるためには、防水性とデザイン性を兼ね備えることが重要といえるでしょう。なおかつ内部空間も豊かにすることを意識して設計することがポイントとなります。

図1屋上緑化した傾斜屋根の立面図[S=1:60]

図
屋上緑化の例 屋上緑化の例。もともとは傾斜屋根で、その勾配を利用して水はけを確保することで、植物の根が腐らないようにしている。土が深い部分には背の高い樹木を植えている

写真5・6太陽光発電パネルとトップライトの設置例

5
1 5.陸屋根の上に波打つように一定の間隔で配置されているのは、太陽光発電パネル。本来なら目立たないように設置するが、あえてデザインとして見せているところがユニーク 6.傾4斜屋根に開閉できるタイプのトップライトを採用することで、採光と通風の効果を発揮。快適な空間が実現する
彦根 アンドレア
P r o f i l e
彦根 アンドレア
(ひこね あんどれあ)
  • 1962年ドイツ・コンスタンツ生まれ。
  • 1987年シュトゥットガルト工科大学首席修了。
  • 1988年青島建築設計事務所入所。
  • 1989年磯崎新アトリエ入所。
  • 1990年彦根建築設計事務所を彦根明氏とともに設立。
  • 2008年JIA(日本建築家協会)環境建築賞一般建築部門最優秀賞受賞。木材活用コンクール部門賞受賞。
  • 2009年木材活用コンクール優秀賞受賞。
  • 2010年JIA(日本建築家協会)環境建築賞住宅部門優秀賞受賞
建築知識研究所

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