第2回 数字で読む建築基準法 今月の数字「3」
耐火・準耐火建築物と階数の数え方
ビューローベリタスジャパン 大澤則夫

更新日2015年10月02日

本号では「3」にスポットを当てて、階と階数に関連した条文を紹介する。
建築基準法に登場する「3階」または「階数3」といえば、耐火・準耐火建築物にかかわる要件が代表的だ。これらは「耐火建築物等としなければならない建築物」(法27条)と「防火地域、準防火地域内の建築物」(法61・62条)で触れられている。いずれも耐火建築物や準耐火建築物とすべき条件を定めているが、「3階以上」や「階数3」のように表現が異なるので、混同しないよう気をつけたい。[図1]

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「3階以上に当該用途」が条件

法27条と別表第1は、特殊建築物の用途に応じた耐火要件を示している。「3階以上の階」に一定の用途を供する特殊建築物は、耐火建築物とする必要がある[表]。これは、火災が生じた際、利用者が避難できる時間を確保することが狙いだ。
  3階以上にある場合に耐火建築物としなければならない用途は、別表第1(い)欄のうち(5)「倉庫」以外のすべて。(1)劇場、映画館など、(2)病院、診療所、ホテルなど、(3)学校、体育館、博物館など、(4)百貨店、マーケット、床面積10㎡超の物品販売店など、(6)自動車車庫、映画スタジオなどである[※1]。ただし下宿、共同住宅、寄宿舎には例外があり、防火地域以外に立地し地上3階建てであれば、主要構造部を1時間準耐火構造とした準耐火建築物(いわゆるイ 1準耐火建築物)とすることができる[※2]。
なお、耐火建築物とするよう求められるのは「3階以上の階」にそれらの用途がある場合に限られる。したがって、たとえば「3階建ての1階と2階に共同住宅があり、3階は事務所」というケースでは耐火建築物にする必要がない[図2]。
また、3階建ての2階と3階に複数の住戸がある場合でも、2階と3階で住戸が異なりそれぞれに専用階段が設置されていれば、耐火建築物にする必要はない[図3a]。この場合は、階段などが共用の共同住宅ではなく、重層長屋に該当するためだ。一方、2階と3階にまたがるメゾネット住戸が複数あり、共用の廊下や階段を備えている場合は、共同住宅に当たるため、耐火建築物としなければならない[図3b]。

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防火地域の規定は「地階」を含む

法61・62条では、計画地の防火指定に応じて耐火要件が導かれる。法61条が防火地域内、法62条が準防火地域内の建築物に対する制限を定めている。ここでは「階数3」という言葉が出てくるが、法61条と法62条では対象とする範囲が異なる。防火地域内では地階を含んだ階数、準防火地域内では地階を除く地上のみの階数を指すので気をつけたい。
防火地域内では、地階を含む階の数が3以上あれば耐火建築物としなければならない[※3]。たとえば「地下1階・地上2階建て」の建築物は階の合計が「3」になるので、耐火建築物としなければならない[図4a]。
防火地域として指定されているのは、火災が発生した場合に大きな被害が予想される商業地、官公庁などが集まる都市部が中心である。こうした地域で耐火建築物とするよう求められるのは、ひとつの建築物で発生した火災の拡大を防ぐと同時に、避難通路を確保する目的がある。 準防火地域内での制限はもう少し緩やかで、建築物相互の延焼を防ぐことが目的になる。木造の建築物が建っている状況も想定されるため、生じた火災の拡大だけでなく、ほかの建築物から火災が燃え移るのを防ぐ目的もある。
準防火地域では「地上の階数が3」の場合に、床面積に応じて何らかの制限がかかる。①延べ面積が500㎡以下であれば、「耐火建築物」「準耐火建築物」「防火上必要な技術的基準に適合する建築物[※4]」のいずれかにしなければならない。②延べ面積が500㎡を超え、かつ1千500㎡以下の場合には「耐火建築物」または「準耐火建築物」としなければならない。③延べ面積が1千500㎡を超えれば、耐火建築物としなければならない[図4b]。 以上のように「3階」または「階数3」についてはさまざまな耐火要件が発生してくるので、計画時には留意する必要がある。
なお、このほか「階数3」以上の建築物では「廊下、避難階段および出入口」[令117条]が、「3階」以上の階(建築物の高さ31m以下の部分に限る)では「非常用進入口の設置」[令126条の6]の規定がそれぞれ適用される。

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大澤則夫
1969 年生まれ。2005 年ビューローベリタスジャパン入社。
現在、同社建築認証事業本部/東京渋谷事務所テクニカルディレクター 2015年4月時点

建築知識研究所

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