第3回 数字で読む建築基準法 今月の数字「2」
間違いやすい道路斜線緩和や避難
ビューローベリタスジャパン 大澤則夫
更新日2015年10月29日
今号のテーマは「2」。2階や2倍などにまつわる条文もあるが、ここでは道路斜線の緩和や屋外避難階段に関連して登場する「2m」を中心に、誤解されがちなポイントを拾い出す。
道路斜線の緩和で塀等の高さは道路中心が起点
1つ目は、道路斜線の緩和に関する2mだ。前面道路から後退した建築物の道路斜線制限は、前面道路の反対側の境界線から、後退距離の分だけ外側の線を起点に算定するという緩和条項がある[法56条2項]。ただし、建築物のうち地盤面下の部分や令130条の12で定める部分は、後退距離の対象外となる。
これには除外項目が設けられており、その1つが「道路に沿って設けられる高さ『2m』以下の門または塀(1・2mを超える部分は、網状その他これに類する形状とする)」である[令130条の12第3号]。後退距離による緩和を得る場合でも、図1で示す形状を備えた門や塀は、建築物と前面道路の間に設けてよい。
この規定に関してよくある間違いが、門や塀の高さを計測する起点についてである。ともすると、計画敷地の地盤面を起点として計測すると考えがちだが、道路斜線の場合と同じく、令130条の12でも前面道路の路面の中心が高さの起点となる[令2条6号イ、図2]。そのため、前面道路が敷地の地盤面より低くなっている場合は注意が必要だ[※1]。
屋外避難階段の開口部は立面の検討も忘れずに
2mに関連して間違えやすい法規制は、ほかにもある。屋外避難階段の構造を定めた令123条2項に、開口部の位置を制限する内容がある。具体的には、階段に通ずる出入口を除き、開口部と階段の距離を2m以上確保しなければならないというものだ[同項1号]。
これは屋内から伝わる熱の影響を受けにくくするための措置である。
しかし、①開口面積が1㎡以内、②法2条9号の2ロに規定する防火設備、③はめ殺し戸、という3つの条件をすべて満たす開口部であれば、階段から2m以内にも設置できる[図3、※2]。
図4で分かるように、平面上は屋外避難階段に接している場合でも、立面上の距離が2m以上離れていれば開口部を配置できる。ただし立面上2m以上離れていても、階段の床面の直下方向には開口部を設置しないことが望ましい(1㎡以内の防火設備となるはめ殺し戸は除く)。設計に際しては、こうした点も含め、平面図だけでなく立面図を用いて位置を検討していくことが大切になる。
なお、屋外避難階段から2m以内に設置できる「開口面積1㎡以内」のはめ殺し戸を図5に示す。2つの開口を並べる際、合計面積が1㎡を超える場合はそれらの間に耐火構造の壁を設けなければならない。窓枠などで区切った場合は、1つの開口とみなされ、屋外避難階段から2m以内に設置することはできない。
階段の踊場と廊下は兼用しない
最後に、「2以上の直通階段」に関連した注意点にも触れておきたい。
一定の条件をもつ建築物の階では、避難階以外から避難階もしくは地上に通じる2以上の直通階段を設けることが求められる[令121条1項]。たとえば、劇場の客席階、病院や診療所で病室の床面積の合計が50㎡を超える階、共同住宅で居室の床面積の合計が100㎡を超える階などが対象になっている[※3]。
ここで注意したいのは、階段の踊場と避難階の廊下の関係だ。原則として、直通階段の踊場と開放廊下を兼用することは認められないという点である[図6]。踊場は別の階から避難階・地上へ向かう人の経路、廊下はその階の人が避難するための経路なので、それぞれ法が定める幅を確保する必要があるからだ。逆に、必要な階段幅と廊下幅を合算した以上の幅を確保すれば、図7のように階段を廊下に接続してもかまわない。
※1 敷地の地盤面が道路中心より1m以上高い場合には、「(高低差"1m)×1/2」だけ前面道路が高い位置にあるとみなす[令135条の2]
※2 換気設備の開口部も、防火ダンバーがあっても屋外避難階段から2m以上離して設置しなければならない。階段から2m未満の部分を貫通するダクトは0.8㎜厚以上の鉄板でつくる
※3 主要構造部が準耐火構造であるか、または不燃材料で造られている場合、それぞれの床面積は100㎡、200㎡と読み替える[令121条2項]
大澤則夫
1969 年生まれ。2005 年ビューローベリタスジャパン入社。
現在、同社建築認証事業本部/東京渋谷事務所テクニカルディレクター
数字で読む建築基準法(建築知識2015年5月号)