第4回 数字で読む建築基準法 今月の数字「200」
階段寸法、直通階段、竪穴区画の規定
ビューローベリタスジャパン 鈴木英俊

更新日2015年12月01日

今回取り上げる数値は「200」。建築基準法や同施行令では、「200㎡」という床面積を基準として定められた規定が複数ある。ここでは、一般規定の「階段」、避難規定の「2以上の直通階段」、防火規定の「竪穴区画」について解説する。

居室の床面積が200㎡超だと階段の寸法が規定される

令23条では、階段の幅、蹴上げ、踏み面の寸法が定められている。このうち同条1項の表の(3)に、200㎡に関連した規定がある。「居室の床面積が200㎡を超える地上階」[※1]の場合、階段とその踊場の幅120 ㎝以上、蹴上げ20㎝以下、踏み面24㎝以上と規定されている[表1]。

留意すべき点は、ここに書かれた200㎡とは「居室」の床面積の合計であり、トイレや倉庫といった非居室は含まれないことである。そのため表の(3)の規定に基づいて確認申請する際に、「居室の床面積の合計」を具体的な数値で記載しておきたい。

ちなみに、踏み面とは算定する段の先端部分と次の段の先端部分の水平距離を指す。段板そのものの奥行とは異なるので、注意が必要だ[図1]。回り階段の踏み面は、段が狭くなっている側の端部から30㎝の位置で測定する[令23条2項、図2]。階段の中央部では規定の踏み面を確保しているものの、端から30㎝の位置では不足しているケースが散見されるので、気をつけたい。

 なお令23条1項の本文には、ただし書きがある。たとえば令120条と令121条に基づく屋外の直通階段であれば、幅を90㎝以上とすることができる。これは、「必ずしなければならない」という意味ではないことを付記しておく。

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2以上の直通階段の設置は床面積の合計を確認

2以上の直通階段を設けなければいけないケースは、令121条1項各号に示されている。200㎡に関する条件が書かれているのは同1項6号ロだ。避難階の直上階については、5階以下の階でその階における居室の床面積の合計が200㎡を超える場合[※2]に、2以上の直通階段を設置する必要がある(令121条1項1号~5号に掲げる階以外の階)。

このように200㎡という記述が登場するのは同1項6号ロだけだが、実際には同2項の内容も関係してくる。主要構造部が準耐火構造か不燃材料で造られている場合には、1項に書かれた数値を2倍にして適用する、いわゆる「倍読み」の規定である。条件を満たした建築物では、令121条1項で100㎡と書かれた内容が200㎡として適用される。3号のキャバレーなどで一定条件を満たすもの、5号の旅館・下宿の宿泊室、共同住宅の居室などが該当する[表2]。



なお、2つの直通階段を設ける場合には経路の取り方に気をつけたい。2つの直通階段に到達するまでの重複距離に関する規定[令121条3項]は、「直通階段に至る通常の歩行経路」を対象としている。ここで通常の歩行経路とは、ほかの部屋を介さずに直通階段へ行き着ける経路を指す。図3のように学校や保育所などで、ある教室を通り抜けないと行き着けない階段は、2以上の直通階段として原則として認められない。

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竪穴区画は一定規模内の住宅で緩和される

もう1つ、200㎡に関連してよく出てくるのが、令112条9項の竪穴区画の規定だ。主要構造部を準耐火構造とした建築物または特定避難時間倒壊等防止建築物であって、地階または3階以上の階に居室を有する建築物の住戸の部分[※3]、吹抜けとなっている部分、階段の部分、昇降機の昇降路の部分などが竪穴区画の対象になる。

ただし、同項の各号で緩和措置が定められている。このうち2号が200㎡に関連した内容で、規模の大きくない住宅に対する除外規定となっている。具体的には、「階数が3以下で延べ面積200㎡以内の戸建住宅」「長屋・共同住宅の住戸のうち階数3以下かつ床面積200㎡以内」の場合に竪穴区画が不要になる。

なお、店舗や車庫などを併設する兼用住宅について図4に例示する。建物全体の床面積が200㎡を超えていても、住戸部分の床面積が200㎡以下で、住戸と店舗・車庫等の境界となる床や壁が防火区画されている場合には、住戸の階段部分等に竪穴区画は求められない。

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※1 居室の床面積の合計が100㎡を超える地階もしくは地下工作物内における階段も同じ
※2 避難階の直上階以外の階では100㎡超の場合に設置が必要となる
※3 住戸の階数が2以上であるものに限る


鈴木英俊
1972 年生まれ。2007 年ビューローベリタスジャパン入社。
現在、同社建築認証事業本部千葉事務所アクティングテクニカルディレクター

数字で読む建築基準法(建築知識2015年6月号)

建築知識研究所

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