基礎杭の施工不良でマンション傾く
工事データ改ざんなど、ずさんな実態が明らかに
更新日2015年12月01日
横浜市都筑区の大型マンション4棟のうち1棟で、基礎杭が不適切に施行され建物が傾いていることが発覚した。マンションの棟どうしを結ぶ渡り廊下の高さがずれているとの指摘が2014年11月に住民から販売会社の三井不動産レジデンシャルに寄せられ、2015年2月の簡易調査で手摺の部分が最大で上下に2.4cmずれていると確認された。10月14日、傾きの原因はマンションを支える52本の基礎杭のうち少なくとも8本が強固な地盤に届いていない、もしくは打ち込む深さが不十分だったという調査結果が公表された。また、杭が強固な地盤に到達したことを確認するデータに別のマンションのデータが転用されたことも判明した。
基礎杭の工事現場は、マンション建設の元請である三井住友建設の孫請けとなった旭化成建材が管理を行っていた。データの転用は現場管理を行っていた旭化成建材の男性管理者によって行われた。さらに、10月16日夜、旭化成建材の前田富弘社長は記者会見で、同じ現場管理者が杭の先端を地盤に固定するためのセメント量のデータについても改ざんしていたことを新たに公表した。強固な地盤に届いていなかった8本と合計で70本に上る杭のデータが偽装されていたことになる。10月22日、旭化成建材は同社が過去10年間に工事を行った建物が全国に3,040件存在するとの報告を国土交通省に提出。今後、この3,040件すべてについてデータの偽装が行われていなかったか調査される。このうち横浜市のマンションでデータの改ざんを行った男性が関与している41件については優先的に調査を行う方針としている。横浜市建築局営繕企画課によると、「市が所有する施設で、旭化成建材が問題のマンションと同様の工法で施工した建物が1件ある。現在、建物の異常は確認されていないが、当時の現場資料のデータに問題がないかなどを調査中」という。全国で3,040件に上る不正の実態調査は、まだ始まったばかりだ。問題を明らかにし、必要な対策が講じられるまで住民や管理者の不安は続く。
MONTHLY NEWS (建築知識2015年12月号)