広島のメイドカフェで火災 既存不適格建築物の危険性が浮き彫りに
更新日2015年12月01日
広島市中区にある繁華街のメイドカフェで、10月8日の夜に火災が発生。木造2階建ての雑居ビルは、9時間以上燃え続けた。出火当時、店内には従業員と客の23名がおり、このうち男性1名と女性2名が重傷、男性2名と女性1名が死亡した。死因はいずれも急性一酸化炭素中毒だ。出火の原因は未だに判明していない。
死傷した6名は、2階に居た。ビルの2階は中央の廊下を挟むようにして約10の個室が配置されており、個室に窓などの排煙設備はなく、壁や天井には燃えやすいベニヤ板が使用されていた。広島市建築指導課の調査によると中央の廊下幅は測定の結果約1.4m、建物の床面積は506m²だった。建築基準法施行令119条は、200平方メートル以上で両側に居室のある通路は、1.6m以上の幅を確保しなければならないと定めている。しかし、今回火災が起きた雑居ビルは建築基準法が施行される昭和25年の2年前、昭和23年に建築。既存不適格建築物であったと考えられる。昭和25年以降に大規模な増改築が行われた場合は、確認申請が必要となり現行の法的規制を受けなければならないが、ベニヤで部屋を仕切る程度ではこれにあたらない可能性がある。
国土交通省は10月13日、全国の建築指導課に向けて、建築基準法令に違反することが見受けられる飲食店や、長年立入り調査が実施されていない飲食店に対する是正指導を行うように求める通知を出した。対象となるのは木造、2階建て以上、延べ面積が300m²以上の建物だ。
今年は、5月18日に川崎市で木造の簡易宿泊所2棟が全焼し死傷者28名を出す火災がすでに起きている。この火災で焼失した宿泊所も木造3階建てに求められる耐火構造になっていなかった疑いがもたれている。その後の川崎市の調査では市内の宿泊施設49棟のうち24棟が建築基準法に違反する建物であることが明らかになった。
2件の火災は、既存建築の安全性を確保するために、具体的な対応策の必要性を強く感じさせる。
MONTHLY NEWS (建築知識2015年12月号)