第5回 数字で読む建築基準法 今月の数字「100」
避難、排煙、防火上主要な間仕切壁の免除規定
ビューローベリタスジャパン 本多徹

更新日2016年01月05日

建築物の計画をする際は、建築基準法の免除規定を使うことがよくある。なかでも、避難規定や防火規定に関する免除では、「100㎡」がキーワードとなることが多い。今月は、避難階段や排煙設備、防火上主要な間仕切壁が免除される条件について、100㎡に着目しながら整理する。

避難階段等の免除規定は適用不可の条件がある

地上5階以上の階や地下2階以下の階には、避難階または地上に通ずる避難階段・特別避難階段の設置が求められる[令122条1項]。ただし、次の場合は設置が免除される。
① 主要構造部が準耐火構造または不燃材でつくられた建築物で、「5階以上の階あるいは地下2階以下の階の床面積の合計がそれぞれ100㎡以下」の場合[図1 (a)]
② 主要構造部を耐火構造とした建築物で「100㎡(共同住宅の住戸では200㎡)以内ごとに耐火構造の床・壁または特定防火設備で防火区画」されている場合[※1]だ[図1 (b)]。

これらの条項は、6階以上の階に居室があり、令121条1項6号イかっこ書の規定により設けられた屋外避難階段または特別避難階段には適用できない。同かっこ書は、用途や面積などに対する一定条件を満たしていれば直通階段を2つ設置しなくてよいとするものである[図2]。

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排煙設備の免除規定は排煙上有効な開口部の有無を確認

排煙設備の設置要件を記した令126条の2第1項にも、100㎡に関連する免除規定がいくつかある[表]。たとえば、延べ面積が500㎡を超える一定用途の特殊建築物に対する緩和だ[同項1号]。病院やホテルなど法別表第1(い)欄(2)項に該当する特殊建築物では、「準耐火構造の床・壁または防火設備(詳しくは表を参照)で100㎡(共同住宅の住戸では200㎡)以内に区画」すれば、排煙設備の設置が免除される。

階数が3以上で延べ面積が500㎡超の建築物では、高さ31m以下の部分で居室の床面積100㎡以内ごとに「防煙壁」[※2]で区画した場合に、排煙設備の設置が免除される。ただし、室[※3]全体で排煙上有効な開口部がない場合には、100㎡以内ごとに防煙壁で区画していても排煙設備は必要となってしまうので注意が必要である[図3]。

そのほか平12建告1436号[※4・5]にも、排煙設備の除外規定がある。100㎡に関する部分を図4にまとめた。なかでもよく使われるのが、居室を対象とした第4号二(3)(4)だ。

二(3)では、床面積100㎡以内ごとに「準耐火構造の床・壁または防火設備」で区画する場合、排煙設備を免除する。一方、二(4)は床面積が100㎡以下で「壁・天井の下地と仕上げを不燃材料としていること」が免除の条件となる。扉を防火設備にする二(3)に対し、二(4)では出入口の戸に対する規定はない[※6]。そこで、事務所の室内を間仕切壁で区切って使う場合などは二(4)を活用することになる。

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防火上主要な間仕切壁の免除規定の改正内容

防火上主要な間仕切壁[令114条2項]の告示でも、「100㎡」がポイントとなっているものがある。小規模な建築物で、居室の床面積100㎡以内の階または居室の床面積100㎡以内ごとに区画(準耐火構造の壁もしくは両面20分の防火設備)し、避難が極めて容易にできるなど一定の条件を満たす部分は、防火上主要な間仕切壁の適用を受けないという免除規定である。

具体的には、これらの各居室に、自動火災報知設備または住宅用防災警報器および住宅用防災報知設備を設けて、次のいずれかに該当するものを設置する[平26国交告860号]。
① 各居室から直接屋外への出口等へ避難できるもの
② 各居室の出口から屋外への出口の一に至る歩行距離が、8m(各居室および通路の壁および天井の仕上げを難燃材料でした場合は16m)以下であって、各居室と通路とが間仕切壁および戸で区画されていること[図5]

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※1 避難経路を確保する必要から、階段室や昇降機の昇降路(乗降ロビーを含む)、廊下等の各部分は含まれない
※2 「天井面から50cm以上下方に突出した垂れ壁(または同等以上に煙の流動を妨げる効果のあるもの)」で、「不燃材料で造り、または覆われたもの」を指す
※3 居室とは人が長い時間過ごす部屋のこと。一方、室とは玄関、廊下、トイレなどのこと
※4 法別表1(い)欄に書かれた特殊建築物で、主たる用途が地階にある場合を除く
※5 平成27年3月18日に告示の改正があり、「ロ」が追加されたことで、それまでよく使われていた「ハ」⇒「ニ」に後送りになった
※6 避難経路等に面する場合には、戸の表面を不燃仕上げとし、かつ常時閉鎖とすることが望ましい
※7 開放できる部分(天井または天井から下方80㎝以内の距離にある部分)の面積の合計が居室の床面積の1/50以上ないこと


本多徹
1963 年生まれ。2003 年ビューローベリタスジャパン入社。
現在、同社建築認証事業本部オペレーションマネージャー

数字で読む建築基準法(建築知識2015年6月号)

建築知識研究所

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