第6回 数字で読む建築基準法 今月の数字「1.2」

更新日2016年02月01日

建築基準法や同施行令に登場する「1.2」は、各部位の幅や高さに関する規制が主となる。今回は「廊下の幅」、「内装制限」、「非常進入口」、「補強コンクリートブロック塀」に関する1.2mについて解説する。

廊下幅は有効寸法で測る

令119条に、「廊下の幅」に関する規定がある。建築物の用途や面積に応じて、片廊下の幅を1.2m以上確保するよう求められている。具体的には、「病院の患者用のもの」「共同住宅の住戸もしくは住室の床面積の合計が100㎡超の階の共用のもの」「居室の床面積の合計200㎡超(地階は100㎡超)の階のもの(3室以下の専用廊下は除く)」が、この規定の対象となる[表1]。中廊下であっても、片側の部屋がトイレや倉庫などの非居室であれば、この規定は適用される[図1]。

注意すべきは、手摺がある場合の計測位置だ。階段と踊場はともに、手摺の出幅が10㎝以内ならその寸法を除いて算出してよい[令23条3項]が、廊下にはこうした除外規定はない。柱や手摺、雨樋、消火栓ボックスなど突出した部分があれば、壁間距離からその部分を除いた有効寸法で測る必要がある[図2]。

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内装制限の除外規定

もう1つ、多くの計画にかかわってくる「1.2m」として内装制限がある。劇場、病院や共同住宅、店舗など一定の用途や階数・規模をもつ建築物では、壁や天井を難燃材料や準不燃材料にすることが求められる[※1]。ただし、一定の条件下では居室の床面から高さ1.2m以下の部分にある壁は適用が除外される[令129条、表2・図3]。

高さ1.2m以下の部分が除外されるのは、令129条1項が例示する特殊建築物の居室と、階数・規模に応じて定めた同条4項の居室部分のみ。これに含まれない自動車車庫や排煙無窓の居室、火気使用室などは、壁全体を準不燃材料で仕上げるよう求められる。

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非常用進入口と代替進入口の違い

3階以上の建築物に関係する「1.2m」は、非常用進入口に関する条項である。高さ31m以下の部分にある3階以上の階では、原則として非常用進入口を設置しなければならない[令126条の6]。非常用進入口の寸法のうち、高さについて1.2m以上とすることが求められる[図4]。ちなみに、非常用進入口は床下端からの高さを80㎝以下とする必要があるほか、奥行き1m以上、長さ4m以上のバルコニーを設けることが求められる。進入口どうしの間隔は、40m以下としなければならない[令126条の7]。

この非常用進入口を設けなくてもよいただし書きの1つに、代替進入口の設置がある[※2]。代替進入口の大きさは、「直径1m以上の円が内接することができる」または「幅75㎝以上、高さ1.2m以上」と規定されている。後者の形は非常用進入口と同じだが、設置方法が異なる。

代替進入口には床面からの高さやバルコニー設置の規定はない(床から1.2m以下が望ましい)。設置間隔は、「当該壁面の長さ10m以内ごと」。これは、壁面を10m以内の長さに区切り、区切った範囲内に設置すれば等間隔にする必要はないので、代替進入口間の距離が10m以上になることもある。

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補強コンクリートブロック塀は地盤面が低いほうから測る

最後に、補強コンクリートブロックの塀に関する「1.2m」について紹介しよう。令62条の8では、1号から7号に、塀の高さや厚さなどに関する条項が示されている。高さ1.2m以下の塀では、このうち長さ3.4m以下ごとの控え壁の設置[5号]と、基礎の丈と根入れ深さの寸法[7号]の規定が除外される[図5]。

ここで注意したいのは、塀の高さを測る起点だ。敷地内に補強コンクリートブロック塀がある場合でも、自分の敷地地盤面から高さを測ればよいわけではない。隣接敷地の地盤が低い場合には、低い側の地盤面から高さを測ることが求められる[図5]

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※1 スプリンクラー設備、水噴霧消火設備、泡消火設備などで自動式のものを設置し、排煙設備を設けた建築物の部分については、内装制限は適用が除外される
※2 非常用エレベータを設置している場合も適用除外される。また代替進入口は、道または道に通じる幅員4m以上の通路などに面する3階以上の階の外壁面に設置する


鈴木英俊
1972 年生まれ。2007 年ビューローベリタスジャパン入社。
現在、同社建築認証事業本部千葉事務所アクティングテクニカルディレクター

数字で読む建築基準法(建築知識2015年8月号)

建築知識研究所

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