第7回 数字で読む建築基準法 今月の数字「500」
床面積が「以下」か「超」かで用途・区画・排煙に影響
ビューローベリタスジャパン 若山裕一
更新日2016年03月01日
建築物の規模が大きくなると、建築可能な建築物の用途や耐火・防火・排煙に関する制限が増えてくる。これらの制限が切り替わる分かれ目の1つが床面積「500」㎡である。今月はこの500㎡に注目し、第1種中高層住居専用地域に建てられる店舗や飲食店、準耐火建築物の防火区画、排煙設備に関する条項を整理する。
第1種中高層住居専用地域に建築可能な店舗や飲食店
各用途地域内の建築物の制限[法48条]の具体的な内容は、法別表第2に記載されている。用途や面積など多くの項目に分かれているが、500㎡が分岐点となるのは、第1種中高層住居専用地域の店舗や飲食店だ[表1]。
店舗、飲食店その他これらに類する用途の建築物で当該部分が500㎡以内の場合は、第1種中高層住居専用地域に建築することができる。ただし、店舗や飲食店は2階以下に配置する必要がある。つまり、1階と2階に250㎡ずつの店舗を配置することは可能であるが[図1左]、合計が500㎡以下であっても3階を店舗や飲食店とする建築物は、特定行政庁の許可がなければ建築してはならない[図1右]。
面積区画や高層区画が必要となる面積と階
大規模な建築物で火災が発生した場合、内部で次々に火災が拡大し大きな被害をもたらすおそれがある。その対策として火災の拡大を防止し局部的なものにとどめるため、一定の面積ごとに防火区画を設けることが義務付けられており、この区画を面積区画[※1]という。
任意に準耐火建築物としたものについて、この面積区画は1千500㎡ごとでよい[令112条1項]。それに対して、法の規定により①特定避難時間倒壊等防止建築物(特定避難時間が1時間以上であるものを除く)とした建築物[法27条1項]、または②準耐火建築物とした建築物[法27条3項、法62条1項、法67条の3・1項]でイ準耐22(45分準耐火)・ロ準耐21(外壁耐火)である場合は、500㎡以内ごとの区画が必要となる[令112条2項、図2]。また、防火上主要な間仕切壁に所要の防火措置を講ずることも規定されている。
一方、建築物の11階以上の部分は一般的には高さが31mを超え、通常のはしご車では届かず、消防活動が著しく困難となり、避難上の支障が生じる可能性が高くなる。そこで、火災が発生しても被害を最小限にするため、11階以上の階では一定の面積以内ごとに防火区画を設けることが定められており、この区画を高層区画という。
高層区画の500㎡は、令112条7項に規定されている。下地や仕上げ材に不燃・準不燃材料以外を用いた場合は100㎡以内ごと[同条5項]、準不燃材料を用いた場合は200㎡以内ごと[同条6項]の防火区画が求められる。それに対して、下地と仕上げに不燃材料を用いた場合は500㎡以内ごとに区画すればよい[図3]
特殊建築物と階数3以上は500㎡以上で排煙設備が必要
最後に、排煙設備の設置について。排煙設備を設置しなければならない条件のうち500㎡に関する条件は、用途に関する内容と規模に応じた内容の2つである[令126条の2第1項、図4]。
用途は、特殊建築物を対象としたものだ。別表第1(い)欄(1)項から(4)項の用途に供する特殊建築物で、延べ面積が500㎡を超える場合は、排煙設備[※2]を設けなければならない。特殊建築物とその他の用途が混在する建築物は、建築物全体で排煙設備の検討が必要になる。したがって特殊建築物である物品販売店舗部分の面積が200㎡であっても、そのほかの事務所などを含めた延べ面積が500㎡を超えれば排煙設備が必要となる。
規模に関する条件は、階数3以上かつ延べ面積500㎡超の場合が対象となる。高さ31m以下で100㎡以内ごとに防煙壁[※3]を設置し、かつ令116条の2・1項2号に該当する窓を有する居室を除き、排煙設備の設置が求められる。
※1 1時間準耐火基準に適合する準耐火構造の床・壁、または特定防火設備で区画する
※2 「床面積500㎡以内ごとに防煙壁で区画」「排煙口の手動開閉装置の設置」「排煙口は防煙区画面積の1/50以上かつ直接外気に接する」などを満たす
※3 間仕切壁、天井面から50cm以上下方に突出した垂壁などで、不燃材料でつくるか覆われたもの
若山裕一
1970 年生まれ。2008 年ビューローベリタスジャパン入社。
現在、同社建築認証事業本部アクティングオペレーションマネージャー(関東西)、東京新宿事務所テクニカルディレクター
数字で読む建築基準法(建築知識2015年9月号)