第8回 数字で読む建築基準法 今月の数字「50」
兼用住宅の消防同意・学校等の内装制限など
ビューローベリタスジャパン 佐久間周一
更新日2016年04月01日
建築基準法では、面積に関する規定と長さに関する規定でしばしば「50」という数値が登場する。用途制限(兼用住宅)や内装制限の「床面積50㎡」はよく知られているが、避難経路や防護壁などでは「長さ50㎝」がポイントとなるケースがある。
兼用住宅では用途規制や消防同意の要否に関係
兼用住宅では、通常の非住宅建築物には適用されない、特別な取り扱いがある。いずれも、住居以外の用途に供する部分の床面積が「50㎡以下」でかつその床面積が延べ面積の「2分の1未満」であることが条件となる[図1]。
1つ目は、これらの条件を満たした兼用住宅は、第1種低層住居専用地域での建築が可能になるというもの[法別表2(い)二]。ただし、兼用できる用途は、基本的に周辺の居住者が日常生活で利用する施設のみとなる。具体的には、事務所や日用品の販売店、食堂、喫茶店、理髪店、美容院、洋服店、学習塾、パン屋や美術工芸品の工房など。ただし、原動機出力には制限がある[令130条の3]。
2つ目は、建築物の計画に当たって必要となる消防長等の同意(消防同意)が、防火指定のない地域で、住居以外の用途が50㎡以内、かつ延べ面積の2分の1以下の兼用住宅には不要というもの〔令147条の3〕。用途規制とは異なり、兼用する用途に制限はない。
住居以外の用途には駐車場も含まれるため、駐車場が50㎡を超える場合には消防同意が必要になる。この場合、異種用途区画も求められるので、住居と兼用部分との間を防火区画しなければならない[令112条12項]。
学校等でも50㎡超の居室は内装制限に注意
天井高が6m以下で排煙無窓の居室は、床面積が50㎡を超えると内装制限の対象となる[令128条の3の2、図2]。この規定自体は単純明快だが、計画に際して見逃しがちなのが学校等[※]の場合だ。
学校等は、利用形態や屋内形状から出火や火災拡大の危険性が低い。避難も容易とみなされ、内装制限や排煙設備の設置に関して免除規定があり、内装制限が必要な特殊建築物からも除外される[令128条の4第1項]。規模の制限についても「学校等の用途に供するものを除く」とかっこ書きで示されている(令128条の4第2・3項)。同様に、排煙設備が必要な特殊建築物を記した令126条の2のただし書きでも「学校等」は対象外だ[同条第1項2号]。
このように、内装や排煙の規制を免れるイメージのある学校等だが前述令128条の3の2には緩和がない。そのため「床面積50㎡超」の教室等は、排煙無窓の居室なら内装制限の対象になる。また、内装制限を受けないためには、排煙有窓とする必要が生じる[図3]。
避難が容易な構造は外通路で幅50㎝以上を確保
避難経路に関する項目では、50㎝という数値は馴染みが薄いかもしれないが、寄宿舎等における間仕切壁の基準を緩和した昨年7月の建築基準法施行令改正に伴って登場している[平26国交告860号]。
改正では、住宅からグループホームなどへの転用を容易にすることを目的に、いくつかの条件を満たせば間仕切壁を準耐火構造としなくてもよいこととなった。条件は、①床面積200㎡以内に区画してスプリンクラーを設ける、②小規模で各居室に火災報知器などを取り付けたうえ、各居室から直接屋外や避難上有効なバルコニーなどに避難できる、などだ。
このうち、②の直接出られる「屋外および避難上有効なバルコニー」は、50㎝以上の幅員をもつ通路・その他の空地に面している必要がある[図4]。
ほかに、50㎝が登場する規定として防煙壁がある。防煙区画に必要な防煙壁は、天井面から50㎝以上下に突き出た垂壁を指す[図5]。垂壁下部に常時閉鎖の不燃戸や常時閉鎖の防火設備を設けたときには、垂れ幅を30㎝とすることができる。
佐久間周一
1981年生まれ。2008年ビューローベリタスジャパン入社。
建築認証事業本部アクティングオペレーションマネージャー(関東東)、東京御茶ノ水事務所テクニカルディレクター
数字で読む建築基準法(建築知識2015年12月号)