第9回 数字で読む建築基準法 今月の数字「10」
高さ、代替進入口の配置、確認申請の要否など
ビューローベリタスジャパン 高柳公一

更新日2016年05月02日

建築基準法に登場する「10」は、高さや水平距離、面積など多岐にわたり、構造にまつわる条項もある。今月は意匠上の観点から、高さに関する制限、代替進入口の配置、面積に応じた確認申請の要否について、10に関連した内容を整理する。

絶対高さと北側斜線は屋上部分の扱いが異なる

「高さ10m」に関する制限は、絶対高さと北側斜線の2種類がある[図1]。

絶対高さは、第1・2種低層住居専用地域を対象とする。これらの地域内では、一般的な建築物の高さは10mまたは12mを超えてはならない[法55条1項、※1]。これは、建築物の規模を3階または4階建て以下程度に制限することで、低層住宅の並ぶ良好な住居環境を保護するための規定だ。

一方、北側斜線は第1・2種低層住居専用地域と第1・2種中高層住居専用地域が対象となり、計画地の北側における日射の確保を目的とする。「隣地境界線または前面道路の反対側境界線までの真北方向の水平距離」に1・25を乗じた数値の斜線勾配に、5mまたは10m[※2]を足した高さ以内に建築物を納める必要がある。

ここで注意したいのが、絶対高さや北側斜線を判断する際の建築物の高さの測り方だ。建築物の高さは、基本的には地盤面を基準に測定するが、屋上部分については高さに算入しなくてよいケースがある[令2条1項6号ロ]。階段室、昇降機塔、物見塔、屋窓、その他これらに類する建築物の屋上部分で、その水平投影面積が建築面積の8分の1以下の場合だ。この条件を満たす屋上部分の高さは、12m(または5m)以下まで高さの算定から除外できる[図2]。屋上部分の高さが12m(または5m)超の場合は、その高さから12m(または5m)を引いた数値を高さに加える。

なお、この「高さに算入しない屋上部分」から除外される規定があり、その1つが北側斜線だ。建築物の高さに算入しなくてよい建築面積の8分の1以下の階段室を屋上に設ける場合でも、北側斜線にはかからないよう計画しなければならない[図3]。

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代替進入口は10m以内ごとに配置

代替進入口[令126条の6第2号、※3]にも、10mに関する規定がある。代替進入口は、非常用進入口の代わりとすることができ、「道または道に通じる幅員4m以上の通路など」に面した高さ31m以下の部分にある3階以上の階の外壁に設けるよう求められている。配置は、壁面の10m以内ごとと定められている[図4]。つまり、この範囲内に設ければ、隣り合う代替進入口の中心線は10mを超えてもよい。

また、敷地が角地で2つの道路に面する場合、代替進入口を設ける壁面はひと続きで考えてよい。たとえば図4右図のケースがそれで、L2が10m超でも、10mの区切り方によってはL2の外壁に2カ所の代替進入口を設けなくてもよいことになる。

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10㎡以下の増・改築、移転は防火指定区域外なら申請不要

確認申請の要否の判断に関する条文で10㎡に関連するのは法6条2項だ[※4]。防火地域と準防火地域以外の増築・改築・移転で、その床面積が10㎡以下であれば確認申請が不要となる[図5]。ただし、新築の場合は、防火指定のない地域かつ10㎡以下であっても確認申請が必要となる。

なお、申請書類を記入する際に気をつけたいことがある。申請書の様式第3面12欄「建築物の数」に、申請する建築物の棟数を記入する際、床面積10㎡超の建築物だけを記入することだ。たとえば100㎡の戸建住宅と8㎡の物置を計画する場合には「1」棟と記入する。物置については、18欄「その他必要な事項」にその「床面積、建築面積、最高高さ」を記入するのが望ましい。棟ごとの内容を記載する第4面も、床面積10㎡超の棟の分だけ用意すればよい。ただし、申請書類の延べ面積や建築面積には、棟数としては除外した10㎡以下の物置の数値も算入する必要がある。記載方法の問題だが、混乱しやすいので注意してほしい。

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※1 10mか12mかは、地域ごとの都市計画で定められている
※2 第1・2種低層住居専用地域の場合は5m、第1・2種中高層住居専用地域の場合は10m
※3 「直径1m以上の円が内接できるもの」または「幅75cm以上・高さ1.2m以上のもの」で、格子などで進入を妨げる構造になっていないもの
※4 都市計画区域・準都市計画区域・準景観区域・知事指定区域以外で4号建築物の場合も建築確認が不要となる[法6条1項]。この場合は新築でも建築確認が不要となる


高柳公一
1979年生まれ。2008年ビューローベリタスジャパン入社。
建築確認審査部川崎事務所アクティングテクニカルディレクター


数字で読む建築基準法(建築知識2016年1月号)

建築知識研究所

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