徹底解説 [ 省エネ ]西方里見氏(西方設計)(2ページ目)

更新日2016年05月19日

太陽光発電システムの導入は住宅性能との両立で考えたい

─太陽光発電システムのメリットはどこにあるのでしょうか?

サスティナブルでエコな電源が、住まいに常備されるという点ですね。イニシャルコストとランニングコストによる減額分の試算では、一般的には前者の方が、少し高くなるのではないでしょうか。

日本で「ZEH」(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)にする場合、次世代省エネレベルの建物に太陽光パネルを設置することが前提となります。一方、米国では建物側の省エネ性能が高ければ補助金が出され、「ゼロエネルギーレディ」と呼ばれています。発電でエネルギーをつくる前に、まずは省エネ性能の高い建物をつくって一次消費エネルギー量をゼロに近づけておく、という考え方です。次世代省エネレベルは、さほど高い省エネ性能ではありません。これからの断熱性能は、そのレベルより上げておくことが必要だと考えます。

─太陽光発電システムを導入する際の、容量の目安を教えてください。

売電にこだわらずに、電気を使う量に合わせて太陽電池パネルを選べばよいと思います。経験上、首都圏では3kWでZEHにすることが可能だと思います。夏場は日射が強いので、日中に発電する電気をエアコンで使えます。寒冷地で日照が少ない地域でも、5kWあれば自宅で使うには十分でしょう。昨年末に自宅をリフォームした際、太陽電池パネルを屋根に載せました。南面と北面の両方で様子を見ていますが、北面でも南面の6割程度の出力が得られています。



太陽電池パネルの選定は結露や漏水、デザインにも配慮

─太陽電池パネルの設置方式や納まりでは、何に配慮すべきでしょうか?

太陽電池パネルは、大きくは置き型と一体型の2つに分かれます。結露や漏水、デザイン上の理由から、私は後者を選んでいます。

最近、タニタハウジングウエア社と共同で、屋根材型太陽光発電システム「エコテクノルーフ」を開発しました。野地板の上にアルミ製の縦桟をビス留めし、桟どうしの間に屋根材を兼ねた発電パネルモジュールを滑り込ませる構成です。パネルモジュールの枠(縦桟)には2重にツバがついているので、縦桟どうしの噛み合わせで止水できます。万一雨水が浸入した場合にも、縦桟内の排水路で軒先に排出します。また、シーリング材などの消耗品を極力使わないことで、施工の効率化と長寿命化が図られています。一般的な規模の住宅屋根であれば2人工で施工できますし、問題が生じたパネルだけを抜き出して交換するなど、経年によるパネルの不具合にも簡単に対応できます。

太陽電池パネル自体が、屋根材として防火地域・準防火地域でも使用できる「飛び火構造認定」を取得していることも大事な点ですね。パネルがこの認定を受けていないと、パネル下に鉄板など不燃材の設置が必要です。その場合、水蒸気を抜くための通気層の確保が難しくなり、結露しやすくなります。

「エコテクノルーフ」では、パネルと野地板の上に敷いたルーフィングの間が通気層になっています。ルーフィングからの水蒸気排出と、発電パネルの熱の排出をこの通気層で行うため、結露しにくいのです[図2]。

さらに、パネルは主にアルミと強化ガラスで構成されており、軽量で地震に強いことも特徴です。住宅性能表示では「軽い屋根」として計算できるので、耐震等級3を取得するには有利です。

北国では積雪を考える必要がありますが、通気層に設ける受け材のピッチを細かくすることで、多雪地帯でも積雪に無理なく対応できます。パネル単体でも荷重試験で2.5m相当の積雪まで耐えることが確認されています。

──このシステムを、今後どのように普及展開させますか?

一部の太陽電池パネルを強化ガラスに置き換え(たとえば3〜4枚分)、その下に太陽熱集熱ユニットを設けるような仕組みを考えています。また、パネルの一部をトップライトにするバリエーションも現在開発中です。住まい方や要望に応じて柔軟に対応できるのが、このシステムの特徴。コスト面以外の要素も比較したうえで選んでいただけたら、と思います。

図2屋根材型太陽光発電システム(エコテクノルーフ タニタハウジングウェア)
施工例 断面詳細図[S=1:50]

図2
彦根 アンドレア
P r o f i l e
西方 里見
(にしかた さとみ)
  • 1951年秋田県能代市生まれ。
  • 1975年室蘭工業大学建築工学科卒業後、
  • 1975年青野環境設計研究所を経て、1981年西方設計工房開所。
  • 1993年西方設計に組織変更、現在に至る。
  • 2004年地域の設計組合「設計チーム木」を結成(代表理事)。
  • 1980年代より現在に至るまで、海外の建築物を定期的に視察し、そのアイデアを日本の風土や気候に合わせて実際の住宅に応用、数多くの住宅や公共建築物などを設計している。地球環境に優しく、快適でデザイン性に優れた住宅を、現在もつくり続けている。
建築知識研究所

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