第1回 建築基準法 集団規定マスターへの道
建築面積 1m後退の条件に要注意!

更新日2016年08月01日

意外に知られていないことや、特定行政庁によって解釈が違うことが散見されます。新連載ではこうした集団規定の基本を押さえつつ、実務に役立つ勘所を拾い出していきます。まずは「建築面積」から、集団規定マスターへの道を歩き始めましょう。 ビューローベリタスジャパン 本多徹

本多徹

建築面積は、建ぺい率を算出する際の基準となる数値だ。具体的には、建築物の「外壁またはこれに代わる柱の中心線(以下、外壁等中心線)」で囲まれた部分の水平投影面積を指す[令2条1項2号]。

つまり、上の階がセットバックしていたり1階部分がピロティになっていたりする場合は、最も外側にある外壁等中心線で計算することが求められる。壁がなく柱だけで構成された部分を建築面積に算入する場合は、柱の中心線で計算することになる。以上が、基本的な考え方である[図1]。

図1 図1

除外規定は高さ1m以下の地階の部分や跳ね出しが対象

ただし、建築面積から除外できるケースがいくつか定められている。

まず、地盤面からの高さが1m以下にある地階は建築面積に算入しない[図2︱①]。建ぺい率は建築物の地上階が敷地をどの程度覆っているかという比率を示す指標であるため、地階部分は考慮しなくてよい。その算定基準となる建築面積も、基本的に地上部分を対象とすることになる。なお、ここで注意してほしいのは、除外できる場合が「地階」に限定されていること。地盤面から高1m以内に位置していたとしても、それが1階にある場合は建築面積に含める必要がある。

除外できる2つめのケースは、軒・庇・跳ね出し縁など(以下、軒等)を備えている場合だ[図2︱②]。軒等が外壁等中心線から1m以上突き出ている場合は、その先端外周線から1m後退させた位置までが建築面積の算定対象となる。外気に有効に開放されている吹きさらしの廊下等[※]も同様に、跳ね出している場合は、外壁等中心線から1m後退した位置までを算入すればよい[図2︱③]。

建築面積に算入しない3つめのケースは、高い開放性を有する部分をもった建築物だ[図2︱④]。これは平成5年建設省告示1437号で定められた内容で、(1)4m以上連続して外壁がない(2)柱の間隔が2m以上(3)天井高が2・1m以上(4)地階を除く階が1である、という条件をすべて満たしている場合が対象になる。この場合も、軒等の先端から1m後退した位置で建築面積を算定できる。なお、(4)の条件にあるように、対象は地上の階数が1であるケースに限られる。そのため上下に複数階重なった吹きさらしのベランダには、この告示を適用することはできない。

図2 図2

袖壁があるベランダは1m後退の緩和不可

最後に、吹きさらしのベランダの注意点についていくつか触れたい[図3]。

1m以上突き出たベランダの建築面積を算定する際は、建築物の反対側から1m分だけ後退させて計算するのが一般的な方法だ。ただし神奈川県など一部の特定行政庁では、建築物の反対側からに加えて、開放されたベランダの両端からも1m後退して計算することが認められている。建築面積が厳しい条件にある計画では、各特定行政庁に事前に確かめておくとよいだろう。

一方、ときどき勘違いされるのが、ベランダの端に袖壁を設けるケースだ。袖壁があると「外気に有効に開放されている」とみなされず、1mの後退が認められない。ベランダの先端まで建築面積に含める必要がある。また、1階部分のベランダが吹きさらしだからと1m後退して計算しているが、実はベランダの上階が室内として使われているような例も見かける。この場合も1m後退できる対象にはならないので気をつけてほしい。

図3 図3


※1外気に有効に開放されている部分の高さが天井から1.1m以上、かつ天井の高さの2分の1以上であることが条件

本多徹
建築面積集団規定マスターへの道建築基準法2003年ビューローベリタスジャパン入社。
建築確認審査部審査部長、横浜事務所

数字で読む建築基準法(建築知識2016年3月号)

建築知識研究所

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