第2回 建築基準法 集団規定マスターへの道
床面積 吹きさらし廊下は部分的に除外
更新日2016年08月31日
容積率などの算定に用いる「床面積」は、集団規定を構成する条文のなかでも基本的な要素の1つです。実務に際しては、どこまで算入して何を除外できるのかに頭を悩ませることも多いでしょう。今号では、誤解しやすい個所を中心に解説します。 ビューローベリタスジャパン 本多徹
床面積は、「建築物の各階またはその一部で壁その他の区画の中心線で囲まれた部分の水平投影面積」を指す[令2条1項3号]。その階を真上から見下ろした面積なので、2階の床面積には2階と1階を結ぶ階段まで、1階の床面積には階段下部分までの面積を算入する。階高の高い階段が階の間で重なっている場合は、重複部分を除外して水平投影部分として算定する[図1]。
算出した各階の床面積を地下階から塔屋まで加えた数値が、容積率のベースになる延べ面積となる[図2]。
留意したいのは、床面積は内部空間を前提としていることだ。たとえば外気に十分に開放されたピロティ[※1]は、屋内的な用途に供しない場合は床面積から除外される。ただし、物置き場などに利用すると屋内的用途となり、床面積に算入しなければならない。以上が床面積の基本的な考え方だが、床面積から除外できる条件がいくつかある。代表的な例を挙げていこう。
まず、前述したピロティのほか、ポーチも原則的に床面積から除外される。ただし通常の出入りに必要な面積を超えると、駐車場という屋内用途に使われる可能性があるとみなされ、床面積に加える必要が生じる。病院やホテルの車寄せは、人の出入りや荷物の積み下ろしに使う範囲の広さであれば、床面積から除外できることが多い。
床面積から除外できるほかの代表的な部分は、吹きさらしの廊下や外気に有効に開放された屋外階段だ。両者は、「外気に有効に開放されている部分の高さが1.1m以上かつ天井の高さの2分の1以上」という前提条件は共通しているが、異なる条件もある[図3]。
屋外階段の場合、「外気に有効に開放されている部分の長さが当該階段の周長の2分の1以上」という条件が加わる。また外気に有効に開放されていれば、その階の階段すべてが床面積から除外される。
一方、廊下の場合は吹きさらしの条件を満たしていても、その階のすべての廊下が床面積から除外されるわけではない。除外する対象が「手すり壁等から2mまで」の部分に限定されるほか、図4のように廊下の両側に壁などがあり、閉鎖的となる部分は床面積に算入する。エレベータホールや住戸の入口の前に目隠し用のスクリーンを設置する場合も、床面積から除外するにはその幅が図4で示す数値以内に収まっていなければならない。
廊下や屋外階段の「外気に有効に開放された部分」は、隣地境界線や隣接する建築物の外壁等から一定距離を取ることも条件になる[※2]。吹きさらし廊下の幅が上下階で異なる場合、外気に有効に開放されているかどうかは、その階から上を見上げて隣地境界線等への水平距離が最短の階の部分で判断する。上階の廊下の出幅がその階より小さい場合、床面積の算入部分は上階の廊下の先端から計算する[図6]。なお、床面積から除外できる条件は、特定行政庁によって少しずつ異なる。ここでは代表的な例を示したが、個別の計画では事前に確認してほしい。
エレベータシャフトやパイプシャフトは、基本的に床面積に算入する。理由は、エレベータのかごが着床する階、配管を横引きする階などは、その階に利用があるからだ。ただし、エレベータが高層用と低層用に分かれて乗降口がない階では床面積に含めなくてよい[図7]。横引き配管のない階のパイプシャフトも、床面積から除外できる。
図
※1 ①周長の相当部分が「壁のような風雨を防ぎ得る構造」で区画されていない、②接している道路や空地と一体の空間を構成し、かつ常に人が通行可能な状態である、の2つが条件
※2 特定行政庁によって異なるので、事前確認が必要。関東では、隣地境界線からの距離を50cm、建築物からの距離を2mとしている場合が多い[図5]
本多徹
建築面積集団規定マスターへの道建築基準法2003年ビューローベリタスジャパン入社。
建築確認審査部審査部長、横浜事務所
数字で読む建築基準法(建築知識2016年4月号)