地盤の違いが明暗を分けた熊本地震被災地を地盤のプロはどう見たのか?(4ページ目)
更新日2016年08月31日
【第3次調査レポート】
被災地でも守られた安全
際立つ適正な地盤調査・工事の重要性
建築知識研究所―第1次、第2次とエリアおよび地盤の広域的な調査を行って、第3次ではより詳細な家屋調査に入られたわけですね。
地盤ネット総合研究所―そうです。被災エリアに、当社が地盤調査を行った物件(自社補償物件)がありましたので、こちらをビルダーの担当者と一緒に調査してきました。
調査対象物件は被災地全域に24件あったのですが、結果として、被災確定物件は益城町で3件です。
熊本市内の別件は、地盤・家屋ともすべて無事でした。
地盤ネット総合研究所―地盤がゆるく震源に近い益城町の低地部にあったのが2件。これは敷地の中に自然地盤と人工地盤が混在しており不均質だったことと、北側の隣接敷地で行われたずさんな擁壁工事の影響で、地盤改良工事が効果を発揮しきれなかったのではと考えています。
もう1件は、良好な高台地盤にあり、地盤そのものには被害はありませんでした。しかし、建物が南北に細長い構造となっていたため、断層の位置的に東西に強いゆれがかかった今回の地震では、耐震性を発揮できずに損傷したものと思われます。
建築知識研究所―被害状況の調査には、どんな手法が用いられているのですか?地盤ネット総合研究所―「スウェーデン式サウンディング試験(SWS試験)」に基づいています。 SWS試験は当社の地盤調査の基準となっており、建物四隅と中心5地点の地耐力の均一性を容易に確 認できすることができます。
被害を受けた物件が施工前にとっていたデータと、今回の被害状況がぴたりと一致していることから、 地震時の不同沈下リスク低減にも有用であるといっていいでしょう。
熊本地震では、施工前に精度の高い地盤調査を行った物件や、調査に基づいて適正な工事をした物件 には、ほとんど被害がありませんでした。調査に協力してくださったビルダーやお客様も、改めて、 確かな地盤あってこその安心な住まいなのだということをご理解くださったようです。
今回の現地調査結果は、被害のあった家と無事だった家は、どこに違いがあったのかをまざま ざと浮き彫りにした。工務店やホームビルダーが技術力向上に努め、建物自体の質が上がって いく中でも、どこに建てたかによって安全性には大きな差がついてしまう。
天災大国と呼ばれる日本の家づくりは、まず良い地盤を選ぶことから始めるべきなのではない だろうか?
天災大国と呼ばれる日本の家づくりは、まず良い地盤を選ぶことから始めるべきなのではない だろうか?