第3回 建築基準法 集団規定マスターへの道
建ぺい率 角地や耐火建築物の緩和条件に注意
更新日2016年10月03日
「建ぺい率」には大きく2つの緩和条件がありますが、角地緩和や防火地域内の耐火建築物の緩和には、それぞれ条件があります。これらを見逃し、10%分の加算を見込んで計画を進めてしまうと、取り返しのつかない事態を招きかねません。注意点を中心に、建ぺい率の規定をおさらいしましょう。 ビューローベリタスジャパン 髙木誠
建ぺい率の制限は、建築物の敷地に一定の空地を設けることによって、日照や採光・通風の確保、延焼の防止などを目的とする。建ぺい率は「建築面積÷敷地面積」×100で算出し、用途地域に応じて都市計画で定めた数値を上限とする[法53条1項、表]。敷地が2以上の用途地域・区域にまたがっている場合の建ぺい率は、それぞれの敷地面積の比率に応じて按分して求める[法53条2項]。
以上が基本的な考え方となるが、建ぺい率には、緩和条件が2つある。「角地緩和」と「防火地域内にある耐火建築物に対する緩和」だ。
角地緩和は、「街区の角にある敷地またはこれに準ずる敷地で特定行政庁が指定するもの」が対象になる[法53条3項2号]。角地に準ずる敷地とは、公園・広場・水面・川その他これらに類するもの(以下、公園等)に接する敷地などを指す。これらの敷地では、「都市計画で定められた建ぺい率の上限値+10」%の建ぺい率とすることができる[表](以下、10%の緩和)。
ここで気をつけたいのは、角地またはこれに準ずる敷地であればすべてが緩和の対象になる、というわけではない点だ。あくまで、特定行政庁が施行細則などで指定する場合に限られる。
また、指定する内容は特定行政庁によって異なる。たとえば東京都では、敷地の周辺の3分の1以上が道路や公園等に設置していることに加え、次のいずれかに該当することも条件となる[図1]。①2つの道路(法42条2項で規定する道路で後退部分を道路として築造しないものを除く)が120°未満の角度で交わる角地、②幅員がそれぞれ8m以上の道路に挟まれた敷地で、道路境界線相互の間隔が35mを超えないもの、③公園等に接する敷地または前面道路の反対側に公園等がある敷地で、①・②に準ずるもの。
横浜市の場合は、道路や空地などに接する周長が敷地外周長さの10分の3以上を条件としているほか、2本の道路に挟まれた場合、1本が幅6m以上の1項道路であればもう1本は2項道路でよい、などの条件になる。特定行政庁によっては、敷地を挟む2本の道路幅員を合計した数値を規定している。いずれにせよ、角地緩和を活用する場合は事前の確認が必要だ。
建ぺい率緩和のもう1つの対象は、「建ぺい率の限度が80%とされる地域外」で「防火地域内にある耐火建築物」だ[法53条3項1号]。この場合も、同様に10%の緩和を受けることができる。一方、「建ぺい率80%の地域内」で「防火地域内にある耐火建築物」は、建ぺい率の規定は適用しない[法53条5項]。つまり、建ぺい率100%まで建てることが可能となる。注意を要するのは、建ぺい率の規制は敷地単位のため、敷地内すべての建築物を「耐火建築物」としなければならないことだ。敷地が防火地域とそれ以外の地域にまたがっている場合、一部の建築物を耐火建築物以外にしてしまうと10%の緩和は認められない[図2]。たとえばマンションの住棟を耐火建築物にして駐輪場を鉄骨造にする計画で、10%の緩和を見込んで設計してしまい、確認申請時に気付くといった事例も見かける。場合によっては計画の大幅な変更が求められるので、十分に注意してほしい。なお、角地緩和と防火地域内における耐火建築物の緩和は併用できる。両方の条件を満たしている場合、建ぺい率は「上限値+20」%とできる。
髙木誠
2008 年ビューローベリタスジャパン入社。建築確認審査部審査部長、立川事務所
数字で読む建築基準法(建築知識2016年5月号)