第4回 建築基準法 集団規定マスターへの道
容積率( 前編) 前面道路による容積率低減に注意

更新日2016年10月28日

良好な市街地環境の確保を目的に、建築物のボリュームをコントロールするよう定められているのが「容積率」の制限です。前面道路幅員に応じた計算方法や緩和措置など、容積率に関する条項は、時代とともに少しずつ変化してきました。今月号と次号の2回に分けて、容積率の考え方について整理します。 ビューローベリタスジャパン 髙木誠

髙木誠

容積率は「延べ面積÷敷地面積」で算出し、建築物の容積率は「容積率の制限」(法定容積率)以下に抑えることが求められる。法定容積率は、用途地域に応じて定められた容積率(指定容積率)と、前面道路の幅員に応じた容積率(道路容積率)から規定される[法52条1項・2項、表1]。以上が容積率の基本的な考え方である。

前面道路が12m未満なら小さいほうの容積率以下に

指定容積率は都市計画によって、用途地域ごとに50%から1300%までの数値が指定される[表1]。たとえば、第1種・第2種低層住居専用地域では50%から200%の範囲で6種類の数値、商業地域では200%から1300%の範囲で12種類の数値がある。前面道路の幅員が12m以上の敷地では、指定容積率がそのまま法定容積率になる。
前面道路の幅員が12m未満の場合には、指定容積率と道路容積率の小さいほうが法定容積率になる。道路容積率は、一般に、住居系用途地域内の建築物は4/10[※1]を、その他の建築物は6/10[※2]を、それぞれ前面道路の幅員に乗じて求める。
たとえば、指定容積率150%の第1種低層住居専用地域で前面道路の幅員が4mの場合、道路容積率は「4(m)×4/10=160%」となり、指定容積率150%のほうが小さいので、150%が法定容積率となる。もし指定容積率が200%の地域であれば、小さい数値である道路容積率160%が法定容積率になる。ただし、容積率はこれだけで決まるわけではなく、いくつかの条件を勘案して算出する。
敷地が2以上の用途地域にまたがっている場合の指定容積率は、面積の比率に応じて按あん分ぶんする[法52条7項]。2以上の前面道路に面している場合の道路容積率は、その幅が最も大きいものを道路幅員として計算する。
少々ややこしいのは、前面道路が幅員15m以上の特定道路に接続する場合の道路幅員の算出方法だ。特定道路から70m以内に位置する敷地で、前面道路の幅員が6m以上12m未満である敷地が対象になる。この場合、図1のように、特定道路からの距離と前面道路の幅員に応じて算出する数値を、道路幅員に加えて前面道路の幅員に応じた容積率を算出することができる[法52条9項]。

エレベータの昇降路と備蓄倉庫などは除外

容積率を計算する際には、いくつかの緩和条項がある。用途に応じた緩和は次号で触れるとして、今回は2つの緩和について紹介する。
1つはエレベータの昇降路で、2014年7月に施行された改正建築基準法により容積率に算入しなくてよいことになった[図2]。法52条6項では除外対象を「政令で定める昇降機の昇降路」とだけ記しているが、令135条の16で「政令で定める昇降機は、エレベーターとする」としている。つまり、エスカレータ、小荷物専用の昇降機、エレベータの機械室は緩和対象に含まれないので注意してほしい。
もう1つ、容積率算定の床面積から除外できるのが、自動車車庫等や備蓄倉庫の部分だ[表2]。もともとは自動車車庫等について、全体の延べ面積の1/5を限度に容積率不算入とする条項があった。近年の防災意識の高まりを受け、2012年の法改正で備蓄倉庫などの防災設備が対象に加わった[令2条3項]。備蓄倉庫部分や蓄電池部分は延べ面積の1/50、自家発電設備設置部分や貯水槽設置部分は床面積の1/100まで、容積率から除外できる。

※1 特定行政庁が指定する区域内の建築物は6/10とする[表1]
※2 特定行政庁が指定する区域内の建築物は4/10または8/10とする[表1]

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髙木誠
2008 年ビューローベリタスジャパン入社。建築確認審査部審査部長、立川事務所

数字で読む建築基準法(建築知識2016年6月号)

建築知識研究所

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