徹底解説[省エネ・断熱]高橋彰氏(日本ERI 省エネ推進部 副部長 兼 経営企画部 専門部長)(2ページ目) 更新日2016年11月11日 断熱性能は燃費性能で可視化 ─省エネ性能表示の努力義務に対する制度として、BELS(建築物省エネルギー性能表示制度)があるのですね。 その通りです。BELSは省エネ性能に特化した評価・表示制度です[図3]。建築物省エネ法7条に基づく表示の努力義務に対応しています。BELS評価機関による第三者認証が前提で、一次エネルギー消費量に基づくBEIの値により、☆の数でラベリングするものです。当初は非住宅建築物を対象とした制度でスタートしましたが、2016年4月からは住宅版BELSも始まりました。国は、各種補助制度で住宅版BELSを採択要件などにしており、4月以降、住宅版BELSの申請件数が急増しています。また、大手の住宅検索サイトでは、今夏から住宅版BELSで物件抽出できるようになるものもあります。今後は、分譲・中古・賃貸住宅において、住宅版BELSでの評価が住まい選びのひとつの基準になっていくことを国は期待しているようです。 ─建物の燃費性能を示す指標として、エネルギーパスもありますね。 住宅版BELSでの評価が、消費者の住まい選びの判断材料になっていくことはとても意義があると考えています。ただし省エネ性能を向上させると当然、工事費(イニシャルコスト)が上がります。そのため光熱費削減額とのバランスを鑑みながら、費用対効果判断することが重要になってきます。そこで弊社は、住宅版BELSを補完するツールとして、エネルギーパスの第三者認証というサービスを提供しています[図4]。エネルギーパスは日本エネルギーパス協会が普及促進を図っている制度です。エネルギーパスを用いると、光熱費のシミュレーションが可能で、工事費増加額とランニングコスト削減額とのバランスを見ながら適切な仕様を判断することができます。その面では、一次エネルギー消費量に基づいてメガジュールという単位で評価する住宅版BELSよりも、消費者にとって判断材料として分かりやすいと考えています。住宅事業者にとっても、断熱仕様などの向上に伴い単価が上がる意味を適切に説明できますから、営業ツールとしても有用だと思います。弊社は、エネルギーパスの営業ツールとしての有用性をお試しいただくために、エネルギーパス第三者認証の料金を無料にするキャンペーンを実施していますので、ぜひご活用していただきたいですね[※]。 ─BELSやエネルギーパスは、住宅の断熱性能向上を一層後押ししそうですね。 欧州では、燃費性能で住まいを選ぶことがすでに一般的になっています。それに対して日本は、消費者がそのような認識をもたないまま安普請の家を選び、高い光熱費を支払いながら、健康被害を受けています。省エネ性能表示が普及することにより、このような状況が改善されていくことを願っています。加えて、住宅戸数が充足して空家率が高まるなかで、これからの住宅事業にとっても、仕様を向上させ差別化を図っていくことは、非常に重要だと思われます。弊社としても、設計者や住宅事業者のそのような取り組みをぜひサポートさせていただきたいと考えています。 図3 住宅の“燃費性能”を示す住宅版BELS 既存の東側の空間は本棚を背景とする書斎になった。既存のLDK住宅に半屋外の空間を付け加えることで、開放性や、新たな用途・機能を与えることができる 図4 “燃費性能”を光熱費で表現するエネルギーパス エネルギーパス第三者認証書の例。省エネ基準を物差しとする躯体の省エネ性能レベルが一目で理解できるようになっているほか、年間の光熱費予測も円単位で表示されている。省エネ性能(断熱性能)を燃費性能として“見える化”することで、消費者に対しての訴求力も高まる ※ 日本ERIは、エネルギーパス第三者認証業務(戸建住宅で、単独審査の場合は税別30,000円)の無料キャンペーンを実施中。期間は2017年3月31日までで、①新築で確認審査業務を日本ERIに申請すること、②住宅版BELS評価を日本ERIに申請すること、が条件となる P r o f i l e 高橋 彰 (たかはし あきら) 1989年リクルート入社。UG都市建築、三和総合研究所(現三菱UFJリサーチ&コンサルティング)、ザイマックスなどを経て、現職 この記事は会員限定です。会員登録後、ログインするとお読みいただけます。 一覧へ戻る 他のカテゴリの記事を読む 徹底解説 住宅ローン 構造 耐震 省エネ 法規 業界 BIM CAD その他
断熱性能は燃費性能で可視化
─省エネ性能表示の努力義務に対する制度として、BELS(建築物省エネルギー性能表示制度)があるのですね。その通りです。BELSは省エネ性能に特化した評価・表示制度です[図3]。建築物省エネ法7条に基づく表示の努力義務に対応しています。BELS評価機関による第三者認証が前提で、一次エネルギー消費量に基づくBEIの値により、☆の数でラベリングするものです。当初は非住宅建築物を対象とした制度でスタートしましたが、2016年4月からは住宅版BELSも始まりました。国は、各種補助制度で住宅版BELSを採択要件などにしており、4月以降、住宅版BELSの申請件数が急増しています。また、大手の住宅検索サイトでは、今夏から住宅版BELSで物件抽出できるようになるものもあります。今後は、分譲・中古・賃貸住宅において、住宅版BELSでの評価が住まい選びのひとつの基準になっていくことを国は期待しているようです。
─建物の燃費性能を示す指標として、エネルギーパスもありますね。住宅版BELSでの評価が、消費者の住まい選びの判断材料になっていくことはとても意義があると考えています。ただし省エネ性能を向上させると当然、工事費(イニシャルコスト)が上がります。そのため光熱費削減額とのバランスを鑑みながら、費用対効果判断することが重要になってきます。
─BELSやエネルギーパスは、住宅の断熱性能向上を一層後押ししそうですね。そこで弊社は、住宅版BELSを補完するツールとして、エネルギーパスの第三者認証というサービスを提供しています[図4]。エネルギーパスは日本エネルギーパス協会が普及促進を図っている制度です。エネルギーパスを用いると、光熱費のシミュレーションが可能で、工事費増加額とランニングコスト削減額とのバランスを見ながら適切な仕様を判断することができます。その面では、一次エネルギー消費量に基づいてメガジュールという単位で評価する住宅版BELSよりも、消費者にとって判断材料として分かりやすいと考えています。
住宅事業者にとっても、断熱仕様などの向上に伴い単価が上がる意味を適切に説明できますから、営業ツールとしても有用だと思います。弊社は、エネルギーパスの営業ツールとしての有用性をお試しいただくために、エネルギーパス第三者認証の料金を無料にするキャンペーンを実施していますので、ぜひご活用していただきたいですね[※]。
欧州では、燃費性能で住まいを選ぶことがすでに一般的になっています。それに対して日本は、消費者がそのような認識をもたないまま安普請の家を選び、高い光熱費を支払いながら、健康被害を受けています。省エネ性能表示が普及することにより、このような状況が改善されていくことを願っています。加えて、住宅戸数が充足して空家率が高まるなかで、これからの住宅事業にとっても、仕様を向上させ差別化を図っていくことは、非常に重要だと思われます。弊社としても、設計者や住宅事業者のそのような取り組みをぜひサポートさせていただきたいと考えています。
図3 住宅の“燃費性能”を示す住宅版BELS
図4 “燃費性能”を光熱費で表現するエネルギーパス