徹底解説[省エネ・断熱]竹内昌義氏
(東北芸術工科大学教授 みかんぐみ共同主宰)(3ページ目)

更新日2016年12月15日

エコハウスで町づくりプロジェクト

─岩手県紫波町でみかんぐみが手がけた「紫波型エコハウスサポートセンター」について教えてください。

地元で採れる木材を使用し、地元の工務店が厳しい省エネ条件を満たす住宅を施工することを条件に、57区画の分譲地を売り出したのが、紫波型エコハウスのプロジェクトです[事例2]。みかんぐみは、町の定めた厳しい省エネ基準を満たし、その快適さを体感できるモデルハウスとなるサポートセンターをつくりました。年間暖房負荷が48kWh/㎡とかなり高断熱仕様になっており、私も実際に泊まってみましたが、外気温がマイナス15℃くらいになる真冬でも、半袖短パンで過ごすことができました。

─町独自の厳しい省エネ基準を満たすために苦労したのはどんな点ですか。

実際に苦労なさったのは地元の工務店さんですが、難しいのはC値[※]の管理です。これまでの次世代省エネ基準では、床面積1㎡当たり5㎠以下の住宅を気密住宅としていますが、紫波町が決めたC値は0.8以下ですから、より高い気密性能を確保なければならず、施工にかなり時間を取られたようです。新しいことに挑戦するのは大変ですが、それを乗り越えないと生き残っていけません。乗り越えることが新たな町づくりにつながり、ひいては社会の仕組みまで変えることになるのではないでしょうか。

─今後、設計事務所は省エネ住宅にどう対応していくべきでしょうか。

断熱性能をある程度高めれば、関東以西の太平洋側の地域であれば、30坪くらいの家はエアコン1台でコントロールできるのが標準になるべきだと、私は思っています。加速する住宅の省エネ化の動きにハウスメーカーはいち早く対応していますし、工務店もかなりの危機感をもって取り組んでいます。省エネ化に対応できないところは淘汰されていくでしょう。設計事務所にとっても重要な課題といえると思います。

建物の床面積[㎡]当たりの隙間面積

事例2 「紫波型エコハウスサポートセンター」(みかんぐみ)

4 5
3岩手県紫波町が取り組む循環型まちづくりプロジェクトのサポートセンターとして、みかんぐみが設計を担当。町産材を構造材の80%以上使用することを義務とし、仕上げ材の30%以上使用することを推奨している 4エコハウスの内部は温度が一定に保たれた大きなワンルーム

表 各省エネ制度の断熱仕様

6 UA値≒0.37Q−0.13
竹内 昌義
P r o f i l e
竹内 昌義
(たけうち まさよし)
  • 1962年神奈川県鎌倉市生まれ。
  • 東京工業大学大学院修士課程修了後
  • 1989~1991年ワークステーション一級建築士事務所。
  • 1991年竹内昌義アトリエ設立。
  • 1995年みかんぐみ共同設立。
  • 2000~2007年東北芸術工科大学建築・環境デザイン学科助教授。
  • 2008年同大学教授。
  • 主な著書に『団地再生計画/みかんぐみのリノベーションカタログ』(INAX出版)、『POST=OFFICEワークスペース改造計画』(TOTO出版)、『見えない震災』(みすず書房)、『未来の住宅/カーボンニュートラルハウスの教科書』(バジリコ)(以上共著)、『原発と建築家』(学芸出版社)ほか
建築知識研究所

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