第6回 建築基準法 集団規定マスターへの道 高さ①

更新日2016年12月27日

今号から数回にわたり「高さ」について解説します。高さを算定するときの起点は原則として地盤面ですが、道路斜線などでは道路中心線が高さの起点になります。またいわゆる塔屋(屋上部分)は、その水平面積によって高さの扱いが異なります。間違えやすいので、気をつけてください。 ビューローベリタスジャパン 草刈直子

草刈直子

建築基準法では、建築物の高さや軒の高さなどが規定されている[令2条1項6号、7号]。これらは地盤面を起点に算定することが基本となる[図1︱ ①]。地盤面とは、建築物が周囲の地面と接する位置の平均高さの水平面のこと。高低差が3m超の場合には、3m以内ごとに複数の地盤面を設定する[令2条2項]。

一方で、地盤面ではなく道路中心線の高さを起点に算定する場合もある。たとえば、道路斜線で規定される建築物の高さ、道路斜線における「建築物の後退距離の算定の特例」[令130条の12]に登場する門や塀などの高さだ[図1︱ ②]。道路を起点とする場合、敷地と道路に大きな高低差があると制限が過度に厳しくなってしまう。そこで両者の高低差Hが1m以上ある場合は、「Hから1mを差し引いて2分の1を乗じた数値」分だけ道路面が高いものとみなす緩和条項がある[図2]。

建築面積の8分の1以下なら高さに含まれない

高さの算定で注意を要するのが、塔屋の扱いだ。建築基準法では「階段室、昇降機塔、装飾塔、物見塔、屋窓その他これらに類する建築物の屋上部分」がこれに相当する。「屋上部分」は、その水平投影面積が建築面積の8分の1以下であれば、原則として高さに算入しなくてよい。ただしいくつかの条件がある。

まず、高さに算入しない屋上部分は、建築物と構造上一体的であり、用途・機能・構造の面で屋上に設けることが適当でなければならない。具体的には、昇降機の乗降ロビー、時計塔や教会の塔状部分、高架水槽、キュービクル、クーリングタワーなど。また、高さに算入しなくてよいのは屋上部分の12mまでとなる[※1、令2条1項6号ロ]。12mを超える屋上は、上端から12mを引いた部分が高さになる。

屋上部分の取り扱いは、斜線制限の種類などによって異なる点にも気をつけたい。道路斜線と隣地斜線は、水平投影面積が建築面積の8分の1以下である屋上部分については12mまでが高さの対象外となる[図3︱①]。一方、北側斜線や高度地区の斜線制限などでは、水平投影面積の大きさにかかわらず屋上部分全体が規制の対象になる[図3︱②]。

屋上に関してはもう1つ「屋上突出物」[令2条1項6号ハ]がある。こちらは屋上に部分的に設置され、かつ屋内的空間を有しないものが対象となる。煙突、換気窓などの立上り部分、避雷針などがこれに該当し、それらは高さに算入しない。開放性の高い手摺も屋上突出物に含まれるが、開放性の低いパネル状の手摺やパラペットは屋上突出物にはならず、高さに算入する必要がある。

小規模な太陽光発電設備は道路斜線などの検討が不要に

最近普及が進む太陽光発電設備の取り扱いについても説明しておこう。

まず、太陽光発電設備は高さも含めて建築基準関係規定に適合させる必要がある。適合していれば前述の「屋上部分」とみなさない[※2]。また、太陽光発電パネル自体の高さの扱いは、面積によって異なる。太陽光発電パネルとそのほかの屋上部分の合計面積が建築面積の8分の1を超えた場合は、太陽光発電パネルは建築物の高さに算入され、すべての高さ関係に適合する必要がある。一方、合計面積が8分の1以下の場合は、「部分的かつ小規模な建築設備」として塔屋と同じように最高高さには含まれず、道路斜線などの検討は不要になる。

※1 第1種・第2種低層住居専用地域内における高さの限度[法55条1項・2項]などについては、高さの算定から除外するのは5m
※2 平成23年国住指4936号(技術的助言)。これにより、建築基準関係規定に適合した太陽光発電パネルを設置する場合には、既存の塔屋は従来どおり高さに算入されないこ とが明示された

図


ビューローベリタスジャパン 草刈直子
2006年ビューローベリタスジャパン入社。建築確認審査部審査部長、埼玉事務所

数字で読む建築基準法(建築知識2016年8月号)

建築知識研究所

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