第7回 建築基準法 集団規定マスターへの道 高さ②
道路斜線は後退緩和と「2Aかつ35m」に注意

更新日2017年01月31日

今号では、高さのうち「道路斜線」に関する規定を整理します。建築物が敷地境界線から後退している場合の緩和措置では、敷地と道路に高低差がある場合の擁壁の扱いが、特定行政庁によって異なることがあり注意が必要です。2以上の前面道路に接した敷地の道路幅員の取り方は一見複雑ですが、2段階に分けて考えると理解しやすくなります。 ビューローベリタスジャパン 鈴木英俊

鈴木英俊

道路斜線制限は、前面道路の反対側の境界線からの斜線によって、建築物の高さを制限する[法56号1項1号]。道路や沿道の建築物における採光、通風などの環境を確保するのが目的だ。

斜線の勾配は、用途地域に応じて原則として3種類に分かれ、道路中心線の高さを高さの起点とする。住居系の用途地域では「道路幅員×1.25」、非住居系の用途地域では「道路幅員×1.5」[図1]、用途地域の指定のない区域では「道路幅員×1.25または1.5 」となる。

ただし、いくつか例外がある。たとえば、第1・2種住居、準住居、準工業の各地域内に定められた高層住居誘導地区内の建築物で「住宅の用途に供する部分の床面積の合計」が延べ面積の3分の2以上の場合は、「道路幅員×1.5」になる。また前面道路が12m以上の場合、住居系地域の一部では緩和措置がある[※1]。

なお、道路斜線は前面道路の反対側からの「適用距離」内を対象とする。適用距離は、道路から建築物が離れるにつれて道路に及ぼす影響が小さくなるほか、容積率による建築物の規模の制限もあることから定められたものだ。20mから50mまで、用途地域の種別と容積率[※2]に応じて法別表3に示されている。

後退緩和は擁壁の扱いに留意

道路斜線を考える際、気をつけたい点の1つに「後退緩和」がある。後退緩和は、道路境界線から距離を置いて建築物を建てる場合、前面道路の反対側にその後退距離を加算する規定だ[法56条2項、※3]。後退距離には、道路に沿って設ける高さ2m以下の門塀(高さが1.2mを超える場合は1.2mを超える部分が網状その他これに類する場合に限る)など、令130条の12で示される部分は含まなくてよい[図2]。

ここで注意を要するのが、敷地に擁壁がある場合の門塀の扱いだ。前面道路との高度差Hが1m以上ある場合は、道路面の想定高さを「Hから1mを差し引いて2分の1を乗じた数値」として算定する。この想定道路高さから門塀の高さを測る際は一般的に、擁壁部分を含めて前述の「高さ2m以下かつ1.2m超の部分は網状」を満たすかどうかを判断する。満たさない場合は後退緩和の対象に含まれないため、門塀の位置[図2②の後退距離B]が後退距離となる。ただし特定行政庁によっては、後退距離算定における擁壁の取り扱いを別に示している場合もある。擁壁のある敷地で道路斜線の後退緩和を利用したい場合は、事前に確認しておきたい。

2以上の前面道路は幅員の広い順から考える

もう1つ頭を悩ませやすい内容に、2以上の前面道路に接する場合[法56条2項]の幅員の取り方がある。令132条の文章は一見難しいが、段階に分けて考えると理解しやすい。図3の4つの前面道路に囲まれた敷地の場合を考えてみよう。前面道路を幅員の大きい順にA・B・C・Dとする。まず、幅員が最大のAを幅員とみなす範囲を考える[令132条1項]。Ⅰ境界線からの距離が2A以内かつ35m以内の区域と、Ⅱ「Ⅰ以外」で前面道路の中心線からの水平距離10m超の区域、の2つがこれに当たる[図3①]。

次に、前述のⅠ・Ⅱを除く部分について考える[令132条2項]。幅員の広いB、C、Dの順に「2B(C、D)かつ35m以内」の範囲を取り、その部分については当該前面道路の幅員とみなすことになる[図3②、③]。このように、幅員の広い道路から順を追って考えると分かりやすくなる。

※1 第1・2種中高層住居地域、第1・2種住居地域、準住居地域で前面道路幅員が12m以上の場合、「前面道路の反対側の境界線からの水平距離≧前面道路幅員×1.25」の区域では、前面道路幅員×1.5となる
※2 都市計画に基づく指定容積率と、道路幅員により算出される基準(道路)容積率の小さいほうとする
※3 後退緩和は1つの敷地に対して1つのみとなり、敷地内に複数の建築物がある場合、前面道路から近いほうの距離が後退距離となる

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ビューローベリタスジャパン 鈴木英俊
2007 年ビューローベリタスジャパン入社。建築確認審査部審査部長、千葉事務所

数字で読む建築基準法(建築知識2016年9月号)

建築知識研究所

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