第8回 建築基準法 集団規定マスターへの道 階数
算入しない条件に要注意

更新日2017年02月28日

構造計算の方法、防火地域内の建築物や避難階段、排煙設備など、多くの規定が階数に応じて定められています。屋上部分や地階については緩和要件があるほか、階とみなされない小屋裏物置等についても、一定の条件が設定されています。階数が変わると建築の計画に大きな影響を与えるため、算定方法や緩和の適用条件などを正確に理解しておきましょう。 ビューローベリタスジャパン 木曽裕司

木曽裕司

「階数」は、建築物の計画を進めるうえで重要な要素の1つだ。「階数が3以上の建築物」「地階を除く階数が3」「5階以下の階」など、階数に応じて建築基準法のさまざまな規定が変わってくるからである。階数の算定は計画の骨格にかかわってくるので、正しく算定することが重要となる。

基本的に階数は、建築物の部分ごとに地上と地下の階数を合計した数値を指す。たとえば地下2階、地上5階建ての建築物の階数は「7階」になる。階数は令2条1項8号に定義されている。建築物の一部に吹抜けがある場合や、斜面や段状の敷地に建ち、部分によって階数が異なる場合は、階数のうち最大のものを建築物の階数とする。屋上部分と地階部分については緩和規定がある。一定の要件を満たした屋上部分や地階部分で、その水平投影面積の合計が建築面積の8分の1以下の場合には階数に算入しない[図1]。

緩和対象の用途は限られる

屋上部分と地階部分の緩和で気をつけたい点は主に2つある。

1つは、屋上部分の水平投影面積の算出法だ。水平投影面積の求め方は建築面積と同じである[令2条4項]。屋上部分に1m以上突き出した庇がある場合は、先端から1m後退した部分までを水平投影面積に含める必要がある[図2]。

もう1つは、階数に含まれない屋上部分と地階の用途だ。階数に含まなくてよいのは、屋上部分では「昇降機塔、装飾塔、物見塔その他これらに類する建築物の部分」、地階では「倉庫、機械室その他これらに類する建築物の部分」に限られる。屋上部分の場合、屋上に設置することがやむを得ない機械室、保守点検など非日常的な使用を目的とした階段室、通常の広さのエレベータホールなどが「その他これらに類する部分」に含まれる。このように用途が限定されているため、室内に便所や手洗いスペースなどを設けると階数に含める必要が生じる[図3]。屋上部分の庇の下に、物置のような用途を発生させた場合も同様だ。こうした用途の部分をうっかり設けてしまう事例が散見されるので注意してほしい。

なお、階数に算入されない屋上部分や地階部分も昇降機塔等の階や地階の倉庫等の階として床面積には算入されるので注意しておきたい。

小屋裏物置等は「余剰空間」の活用

近年、小屋裏に物置等として使用するロフトなどを設ける事例が増えている。これらは、一定の条件を満たせば床面積不算入および階数不算入となる。空間を有効活用する方法として活用している設計者も多いだろう。

ここで覚えておいてほしいのは、「階とみなされない小屋裏物置等」の規定は、あくまで余剰空間としての利用を前提にしている点だ。その部分だけ屋根形状を変えるなどして意図的に設ける場合は、対象から除外される。

小屋裏物置等が階とみなされないようにするためには、主に次の3つをすべて満たすことが求められる。①1の階にある小屋裏物置等の水平投影面積の合計がその階の床面積の2分の1未満であること、②小屋裏物置等の内法天井高さが1.4m以下であること、③階の中間に設ける場合、直下の天井高さを2.1m 以上確保すること[図4、※1]。

そのほか細かい取り扱いは特定行政庁などによって異なる。小屋裏収納に設ける窓は当該床面積の20分の1以下の換気用に限る、固定階段を設けてはならない[※2]、などと規定するところもあるので事前の確認が必要だ。

※1 階の中間にある階段等から利用する場合も、①〜③をすべて満たす余剰空間は階とみなさず、床面積に算入しない
※2 固定階段の設置が認められる場合、階段は床面積に算入する

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ビューローベリタスジャパン 木曽裕司
2006年ビューローベリタスジャパン入社。建築確認審査部審査部長、東京新宿事務所

数字で読む建築基準法(建築知識2016年12月号)

建築知識研究所

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