第9回 建築基準法 集団規定マスターへの道
天空率(前編) 敷地や屋上手摺なども計画建物に含めて算定を

更新日2017年03月31日

本連載最後のテーマは「天空率」。次号と2回に分けて解説します。道路・隣地・北側の高さ制限を適用除外できる天空率を活用すると、建物の高さをより柔軟に計画できる点がメリットです。算定ソフトを使用する際には、測定点の設定などを間違えないよう注意してください。 ビューローベリタスジャパン 木曽裕司

木曽裕司

天空率は、斜線制限の性能規定化を図った平成14年の建築基準法改正で登場した規定である。

通常の各斜線制限を適用した場合に確保できる採光、通風などと同程度以上の採光・通風などを確保できる場合、天空率に適合すれば、道路斜線・隣地斜線・北側斜線を適用しないという内容だ[法56条7項]。天空率の導入によって、従来の各斜線制限以上の高層建築物が可能になった。

なお、高度地区の高度斜線については、天空率を利用した適用除外はない。天空率を利用できるのは、道路・隣地・北側の3つ斜線制限に限られるので注意してほしい。

測定点は斜線制限ごとに異なる

天空率は、条文で定められた測定点から計画建築物を見上げた場合に、斜線制限を適用した建築物(以下、適合建築物)と同等以上の空が見えるようにするものだ。図1の天空全体の円のなかで、空の部分(建築物の影を除いた白い部分)が占める比率を比べ、計画建築物の天空率が適合建築物のそれを上回るように計画する。

詳しい算定方法は、図2のようになる。斜線ごとに定められた測定点を中心に天空の半球を描き、「半球の水平投影面積」に対する「天空の水平投影面積(半球の水平投影面積から計画建物の水平投影面積を除いた面積)」の比率が天空率となる。

各測定点の位置は、基準線上に配置した複数の箇所となり、斜線ごとに次のように定められている。

道路斜線を適用せず、天空率を利用する場合の基準線は、前面道路の反対側の道路境界線だ。隣地斜線を適用しない場合は、隣地境界線の16m外側の線[※1]、北側斜線では敷地の真北方向へ4mの線[※2]が基準線になる。

いずれの斜線制限でも、敷地の両端に対応した基準線上の点と、両者の間を規定の長さ以内に等分した点すべてが測定点となる。等分する寸法は、道路斜線では「前面道路の幅員×2分の1」以内、隣地斜線では8m以内[※1]、北側斜線では1m以内[※2]とする[図3、表]。

天空率の算定対象となる敷地の範囲は、道路斜線と同様に法別表3の「適用距離」内とする。一方、隣地斜線と北側斜線を適用せず、天空率を利用する場合は、敷地内全体で算定する。

敷地内にあるフェンスなども含めて算定する

天空率を算定する際に気をつける点をいくつか挙げよう。

算定する対象には、建築物だけでなく敷地の地盤も含まれる。道路斜線の場合、測定点の高さは道路中心線となるので、敷地が道路中心レベルよりも高い位置にある場合、敷地形状(道路からの高さなど)を計画建物の天空図に反映させる必要がある。

また計画建築物の天空率を検討する際には、敷地内に設ける門や塀等のほか、塔屋[※3]や屋上の手摺、キュービクルや受水槽といった建築設備も含めて考える。

天空率の算定では、規定された複数の測定点で、計画建物と適合建物の天空率を求め、それらの差が最も小さい測定点を抽出して詳細な検討を行う。算定ソフトなどで、塀や屋上の手摺などを入力し忘れた結果、詳細検討で天空率が規定をオーバーしてしまうといった例も見かける。確認申請時になって気づくと、計画の大幅修正につながりかねない。手戻りを防ぐためにも、対象となる計画建物形状や敷地内に設けられる塀や手摺なども確かめておきたい。

※1 制限斜線勾配が1.25である住居系地域・無指定の地域の場合。それ以外の制限斜線勾配2.5の地域では、基準線の位置は隣地境界線から12.4m外側、測定点の間隔は6.2m以内
※2 第1種・第2種低層住居専用地域の場合。第1種・第2種中高層住居専用地域では、基準線の位置は敷地の真北方向に8m、測定点の間隔は2m以内
※3 水平投影面積が建築面積×1/8以下の階段室、昇降機塔など[令2条1項6号ロ]


ビューローベリタスジャパン 木曽裕司
2006年ビューローベリタスジャパン入社。建築確認審査部審査部長、東京新宿事務所

数字で読む建築基準法(建築知識2017年1月号)

建築知識研究所

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