建築物省エネ法マニュアル 第2回
4月1日施行「規制措置」をマスター

更新日2017年08月31日

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2015年7月に制定された建築物省エネ法(建築物のエネルギー消費性能の向上に関する法律)は、すでに施行済みの誘導措置に続き、今年の4月1日に規制措置も施行される。この規制措置には、「基準適合義務」「届出」「住宅トップランナー制度」という3つの項目がある。

基準適合義務の対象建物は省エネ適合性判定が必須に

「基準適合義務」の対象となるのは、特定建築行為[※1]に該当する場合だ。対象建築物は、省エネ基準に適合させなければならない(建築物省エネ法11条)。また、この規定は建築基準関係規定のため、建築基準法における確認申請時には、省エネ基準に適合しているかについても確認される。具体的には、確認申請とは別に所管行政庁または登録省エネ判定機関[※2]に「建築物エネルギー消費性能確保計画(省エネ計画)」を提出し、「省エネ基準に適合してる旨の通知書(省エネ適合判定通知書)」の交付を受け、これを確認申請書に添付する。確認審査では、省エネ適合判定通知書の交付を受けた建築物の計画と確認申請書の計画が同一であることなどが確認される。完了検査でも、省エネ基準への適合確認が検査の対象とされており、設計図書どおりの施工が確認できない場合は、検査済証は交付されない[図1]。

「届出」の対象となる建築物は、前述の基準適合義務の対象となるものを除く300㎡以上の新築等を行う建築物だ。建築物の用途に関係なく、すべての建築物が対象となる。着工の21日前までに「エネルギー消費性能の確保のための構造及び設備に関する計画(届出に係る省エネ計画)」を所管行政庁に届け出る必要がある[建築物省エネ法19条]。現行省エネ法(エネルギーの使用の合理化等に関する法律)[※3]にも届出義務は定められているが、改正後の建築物省エネ法では、基準に適合しない場合は、所管行政庁から計画を変更する「指示、命令等」が必要に応じて出されるなど規制が強化された。

「住宅トップランナー制度」は、現行省エネ法から移行され、建築物省エネ法27条に定められる。対象となるのは、建売りの戸建住宅を供給する住宅事業主だ。注文住宅、建売り、建て替えについては対象外となる。住宅事業主が供給する建売りの戸建住宅に対して省エネ性能の基準(住宅トップランナー基準)を定めて、省エネ性能の向上を誘導する制度である。供給戸数が年間150戸以上の住宅事業主に対しては、基準に適合しない場合に必要に応じて国土交通大臣が「勧告、公表、命令」を行えることになっている(建築物省エネ法28条)。「届出」と同様に、罰則規定も置かれている[表]。

着工・建築確認が施行日前後の場合は注意

’17年4月1日に施行される規制措置は、着工や計画変更の申請などが施行日前後の場合、適用されるか否か注意が必要だ。各手続き日や着工日などによって、基準適合義務が生じるかどうかは、図2のようになる。①確認申請(受付日)が施行日以降になる特定建築物では、適合義務の対象となり適合性判定も必要になる。②確認申請は施行日前だが、着工は施行日以降となる場合は、着工の21日前までに現行省エネ法の届出が必要であり、適合義務の対象外となる。③施行日から着工まで21日以上あるケース(つまり’17年4月21日以降に着工)。この場合でも、施行日前に確認申請を行えば適合義務の対象外となる。ただし、施行日前までに現行省エネ法の届出は行う必要があり、これを怠ると届出義務違反となり、罰則の対象となるので注意が必要だ。④経過措置のケースもある。本来、施行日以降に確認申請を行う場合は適合義務の対象となるが、施行日前に現行省エネ法の届出を行った場合は、適合義務の対象外となる。この場合は、確認申請時に現行省エネ法に基づく届出書の写しを添付する必要がある。⑤確認申請も着工も施行日前だが、施行日以降に計画変更を出す場合、原則は規制措置の対象外である。ただし、工事中に床面積が増加し2千㎡以上の特定建築物となる場合は、計画変更の申請時に省エネ適合性判定を受ける必要が生じる可能性がある[⑤−2]。また、同一敷地内に別棟で2千㎡以上の特定建築物を追加するような計画変更の場合も、同様に適合義務の対象になると考えられる[⑤−3]。

このように、施行日の前後では、手続き時期や内容によって、現行法が適用される場合と、新たに施行される規制措置が適用される場合があるので注意したい。

※1 非住宅部分が2,000㎡以上の建築物(特定建築物)の新築のこと。この他、特定建築物の増改築(非住宅部分の増改築の規模が300㎡以上)、特定建築物以外の建築物の増築(非住宅部分の増築の規模が300㎡以上で、増築後に特定建築物となるもの)なども含まれる[建築物省エネ法11条1項]
※2 登録建築物エネルギー消費性能判定機関のこと。所管行政庁は、建築物省エネルギー消費性能適合判定を行わせることができる[建築物省エネ法15条1項]
※3 現行省エネ法(エネルギーの使用の合理化等に関する法律)は、建築物省エネ法の施行に伴い廃止される一部の規定を除き、4月1日以降も存続する

基準適合義務の対象は2千㎡以上の非住宅ですが、施行日前後に確認申請などの手続きがある場合は注意が必要です。

ビューローベリタスジャパン 渡邊仁士
2005年ビューローベリタスジャパン入社。建築確認審査部技術課

建築物省エネ法マニュアル(建築知識2017年4月号)

建築知識研究所

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