徹底解説[省エネ・断熱]竹内昌義氏
(東北芸術工科大学教授 みかんぐみ共同主宰)(2ページ目)

更新日2016年12月15日

プランのポイントは日射と風の採り入れ方

─省エネ住宅を設計する際のポイントを教えてください。

プランを考えるうえで一番大切なのは、日射取得の仕方です。建物の断熱性能を高めたうえで、外からのエネルギーをできるだけ活用したいのです。日本は、夏の日差しは高く、冬には低くなりますから、これを利用しない手はありません。庇を出せば夏の日射をカットして、冬の日射を採り入れられます。

「愛知の家」は、できるだけ日射を取得するために真南に向けて建物を配置し、庇と袖壁を出しています[事例1]。庇の出は、開口部の高さの3分の1とし、夏の直射光をカットし冬の日射を採り入れています。また、午前10時から午後2時くらいの間は日射が斜めに入ってきますので、袖壁を設けて室内の区画と日射コントロールの両方の役割をもたせています。デザイン的に庇を出したくないという設計者もいますが、「愛知の家」は袖壁も出すことで箱に見えるようになっていて、デザインの工夫次第だと思います。また、3階建ての母屋の隣に両親の家がありますが、こちらは予算の都合で断熱性能はそれほど高くありません。実際の性能は違っても同じように見えるようにデザインしています。

─風はどのように取り入れると効果的ですか。

春や秋など冷暖房を仕様しない中間期には風を通したいので、2面に窓を設けることが基本です。加えて、風がなくて室内の空気が温まってしまったときに外に逃がす仕組みも必要なので、上下の2方向にも窓を設けています。よく高断熱の家は熱がこもりやすいといわれますが、熱が逃げるように窓を設けておけば問題ありません。省エネ住宅だからといって魔法瓶みたいな家をつくるのも間違っていますし、デザインと性能のバランスが求められるのが、今の時代だと思います。ちなみに「愛知の家」は、母屋は3階建てで、1階にカフェとオフィス、2階にLDK、3階に寝室を配置しました。上下の温度差がないうえ、ご夫婦2人なので仕切る必要もないため、この家にはドアがほとんどありません。エアコンは1階と3階に1台ずつ設置していますが、昨年の冬にエアコンを使ったのは、2回だけだったそうです。家のなかで着ていた防寒着も捨てたと言っていました。

事例1「愛知の家」(みかんぐみ)

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1左が両親の家、正面に母屋、右にガレージと、中庭を囲むように3つの建物を配置。母屋は3階建てで、1階にカフェとオフィス、2階にLDK、3階に寝室や水廻りを配している。南側に大きな開口部を設けて冬の日差しをたっぷり採り込み、庇と袖壁を出して夏の日射をコントロール 2開放的な2階LDK。室内まで貫入した袖壁が、生活シーンを緩やかに分けている(設計:みかんぐみ 1写真:新建築写真部) 3
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