BIMデータ×VRを活用したプレゼンが生む、さらなる説得力(2ページ目)
更新日2017年08月29日
3DのBIMデータに、時間軸をプラス
「REVIT LIVE」で飛躍的に高まる説得力
建築知識研究所―BIMによる住宅建築、成果には大満足という印象ですね。
フリーダム―いえ、本音をいえばやはりまだまだ不満はあります。社内の普及率はまだ35%程度ですし、基本設計+プレゼンでの利用率が上がってきましたが、実施図面までは完成していません。設計者自身がもっとBIMを活用すべくマインドを変える必要があると思います。
また、実施設計に対応するためにも、メーカーからのファミリ提供の拡充は急務といえます。
建築知識研究所―最近はなにか新たなチャレンジをされていますか?
フリーダム―没入型プレゼンテーションとして、VRを導入しはじめました。これは3次元空間での体感をクライアント・設計者が共有できる、強い説得力を持ったプレゼンツールです。さらには、REVIT LIVEによって時間軸を加えた4次元の検証も可能なんです。
たとえばこの案件は、中庭を中心に部屋が配置されていることが最初のオーダーでした。中でも重視されたのが、2階にある、たっぷりと日の光が入るリビングというご希望です。
これに対し、設計者はこれまでの経験則を踏まえて、南側全面に大きな窓を配置しました。しかし奥行きがあるリビングでは、南面に全面フルハイサッシを設けても全体に陽が当たらないことがシミュレーションで判明したのです。
そこで、設計者は3階部分を変更し、2階リビングの上部を吹き抜けにして、2層分の高さの窓を設置しました。そして、こうすれば、奥までしっかり光が入るリビングになるということを、シミュレーションで実証し、採用されました。
ただ、「見た目がかっこいい」とか、「開放感がある」というふわっとした理由ではなく、日の当たるリビングという希望をかなえるためにこう変更した、と説明できるため、機能とデザインが一致している。
もし、期待していたほどの光が入らないということが、建てた後に発覚したら、クライアントに対して説明がつかないでしょう。
建築知識研究所―これは、1日分の光の入り方が、すべてシミュレーションできるということですか?
フリーダム―そうです、REVITで設計したモデルをそのままLiveデータに変換すれば、住まいのどの場所でも、自由に365日24時間 日照状況がチェックできます。
周りの建物のボリュームも作っておけば、周辺建物の影響も考慮したシミュレーションが可能です。
建築知識研究所―正直、ある程度課題をクリアしていたら、多少妥協していただくというのも、家作りにはよくあることかと思いますが…。
フリーダム―いえ、私たちの家ではそこでクライアントに妥協していただきたくないんです。そのために知識や技術を日々高めているのですし、せっかく建てるのなら、期待以上の家を提案したいと考えています。
それが設計者の仕事だと思っていますし、VRはそれを可能にする必須ツールだと考えています。
建築知識研究所―クライアントは驚かれるでしょうね。
フリーダム―クライアントはもちろんですが、設計者自身が、驚くことが多々ありますね。いい意味でも悪い意味でも。BIM+VRで事前に設計者が空間体験をすることで、さらに良いアイデアが生まれます。
いずれにしても、かつてのようにクライアントが気に入ってくれるかと心配しながら図面を見せるのとでは、自信も説得力もまったく違います。
納得のいく空間が出来上がり自ら事前に体感すると、クライアントに見てもらいたくなります。
建築知識研究所―実際、このプレゼンを受けたクライアントの反応はいかがでしたか?
フリーダム―とても感激してくださいますね。設計者は下手な空間説明をするよりも、「まずはこの部屋から」と家の中を案内するだけで、すべてが伝わりますし、クライアントも、部屋を歩きながら具体的なリクエストや質問を寄せてくださる。
家づくりとは楽しいことなんだと実感していただけます。
建築知識研究所―クライアントの反応を見ても、平面図よりも3D・CGの方が伝わる。そして3D・CG+VRシミュレーションで、さらに伝わるという感じでしょうか?
フリーダム―そうですね。車の購入に例えると、車のカタログを取り寄せて選ぶ=図面とCGによるプレゼン。ディーラーで実車を見て乗ってみる=VRプレゼン+シミュレーションという感じでしょうか。
カタログを見ているだけでは、色は黒か白かといった表面上の違いが悩みどころになりますが、実際に乗ってみると、ハンドリングや空間の快適さの方に目がいくものです。
VRを体験したクライアントは、目先の色や素材より、空間の広さや動線を気にして見るようになります。実際に住み始めたときに重要なのはそこですから、私たちはクライアントの要望をプラン、形にし、それをわかりやすく伝えるツールこだわっているのです。