徹底解説[ 屋 根 ] 本間 至氏(ブライシュティフト)

更新日2015年06月05日

魅せる屋根の設計手法

徹底解説 本間 至氏(ブライシュティフト)

住宅の外観が与える印象のなかでも、
屋根のデザインは大切な役割を担っている。
外観を引き立てる“魅せる屋根”にするには、
形状や勾配、素材や色などの要素を
どのように考え、デザインしたらよいのだろうか。
ここでは特に、都市部と郊外それぞれにおける
住宅の屋根デザインの違いを中心に、
建築家・本間至氏にうかがった。

取材・文=森 聖加 人物撮影=石井真弓
─屋根のデザインに求められるのはどんなことでしょうか。

建築物には、自然から人間の身体を保護するという基本的な役割があります。そのなかで屋根が求められるのは、風雨と日差しを制御する機能です。それを満足させるデザインであることが、まず大切でしょう。

私が住宅を設計する際には、敷地条件や建築主の希望に応じて内部のプランニングを決定してから屋根の形状を検討します。快適な暮らしの実現に必要な容積を確保するために、屋根の勾配やかけ方を決めていきます。

─屋根形状によって外観の印象は変わりますか?

建築物が小さく見えるように、軒の出を抑え、勾配を緩やかにしたりすることはあります。住宅が大きく見えて自己主張するよりも、小さくまとまっているほうが、周辺環境に馴染みやすく、品よい感じにもなります。加えて、体感的な理由もあります。外観が小さく見えれば、内部に足を踏み入れたときに、予想以上の広がりを感じられるのです。外観と内観にメリハリを付けることで、内部の広がりを強調できるのです。

─都市部の住宅と郊外の住宅では、屋根の形状を決める要素が異なると思いますが、都市部ではどのようにお考えですか。 

都市部ではほとんどの場合、斜線制限がかかります。そして前述のとおり、内部のプランと必要なボリュームの調整に基づき屋根の形状を決めることになります。

木造住宅では屋根の勾配をそのまま天井の傾斜として表現できます。天井を露わにした小屋裏などは、包まれるような造形と素材の温かみが安心感をもたらす効果もあります。斜線制限を受ける北側は制限ギリギリの急勾配で室内の高さを確保し、南側の屋根は緩い勾配にします。屋根勾配を反映した小屋裏は、天井が低いため、座って過ごす和室や子供室とすることも多いですね。

小屋裏では光を採り入れるために屋根に天窓を設置することも多いです。採り入れた光はさらに階下に落として有効活用します。最近では断熱性や気密性の高い天窓がありますので、そういったものを選ぶとよいでしょう。

建築知識研究所

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