徹底解説 [ 高級住宅 ] 彦根 明氏(彦根建築設計事務所)(3ページ目)

更新日2015年06月19日

─プランを検討する上では、開口部をどの位置にもってくるかも悩みどころの1つです。

南側の光に気を配ることが大切です。ただし、南側に大開口部を設ける場合は、必ず庇や軒を出して、光や日射熱、まぶしさを制御したい。また、軒を深くすると、雨避けにも有利です。日射対策には、窓ガラスに貼って日射熱を遮断する高性能のフィルム製品もたくさん出ています。たとえば、帝人の「レフテル」は自宅でも使っていますが、非常に効果が高い製品だと思います。

事例「SHS」では、とにかく明るい住まいにしたいという要望があったので、2階リビングの天井を高くして、ハイサイドライトを付けています。高い位置に設けたので、電動で窓の開閉ができるようにしています。それなりの費用はかかりましたが、採光だけでなく、通風のための有効な装置でもあるので、これは削れません。光と風は、両方の導き方を同時に考えながら計画することが重要なのです。

一方、1階のLDKは奥行きが深くなるので、部屋の中心部が暗くならないように配慮しました。床材にはブラックウォルナットを用いると決めていましたので、天井や壁の仕上げには、できるだけ光の反射率が高いものを選びました。さらに、2面の壁に開口部を設けて採光を得るなど、窓の配置による明るさの操作もしています。

─最後に、ディテールを美しく納めるポイントとは?

たとえば、天井には何も付けないと決めてプランを練ると、空間の仕上がりに差が出ます。壁や天井に取り付けるものといえば、照明器具やスイッチといった設備類です。スイッチなら目立たないところに設置したり、蓋を付けて隠したりすることもあります。ほかにもドアノブをなくす、扉には隠し蝶番を用いるなど、普通の住宅に存在するものを見えないようにして空間の細部を整えることも大事です。

こうした工夫をすれば使い勝手に支障をきたさずに、壁や天井の付属物をなくせます。ディテールに気を配ることで、空間に広がりを生むことができ、上質な雰囲気にまとめることにもつながるのです。

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P r o f i l e
彦 根 明
(ひこね あきら)
  • 1962年埼玉県生まれ。
  • 1985東京藝術大学建築学科卒業。
  • 1987年同大学大学院修士課程修了。
  • 1987年磯崎新アトリエ入所。
  • 1990年彦根建築設計事務所設立(彦根アンドレアとともに)。
  • 東海大学非常勤講師。
  • 住宅を中心に設計を手掛け、上質な空間づくりに定評がある。
  • 最近の作品は「BBV」「ISS」「SGM」。1994年日本建築士会連合会賞、
  • 2008年、2010年、2011年日本建築家協会優秀建築選、
  • 1994年、2003年、2011年にグッドデザイン賞受賞。
  • 著書に『最高に美しい住宅をつくる方法』(小社刊)
建築知識研究所

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