徹底解説[地盤・基礎]山田憲明氏(山田憲明構造設計事務所)

更新日2016年06月23日

安全で合理的な木造建築の地盤と基礎

安全で合理的な木造建築の地盤と基礎

木造建築の高耐震化へのニーズが高まっている。 2010年に公共建築物等木材利用促進法が施行されたことで、公共施設や老人福祉施設での木造化への動きが 活発化すると予想されていたところに、11年の東北地方太平洋沖地震による未曾有の被害が衝撃を与えた。高耐震化には、構造はもとより、地盤と基礎の強化も必要不可欠。小中断面材を使用した建築物の構造設計を、住宅から学校や庁舎などの中・大規模木造まで数多く手がける山田憲明氏に聞いた。

取材・文=椎名 前太 人物撮影=石井 真弓
─東日本大震災の前と後で、木造建築物の耐震性に対する社会の認識に変化はありましたか?

東日本大震災では、天井材や外装材の落下や脱落などが多くあり、構造設計者の非構造部材に対する意識が格段に上がりました。これらに対して今後どのようなアプローチで設計していくかを考えるようになりました。

また、発注者の方からは計画建物の耐震性能を建築基準法+αレベルにしてほしいという要望が増えました。

─最近、中・大規模木造は増えているのでしょうか?

2010年に公共建築物等木材利用促進法が施行されたところに、2011年に震災が起こり、環境やエネルギーに対する意識も高まりました。そして、それまでほとんどゼロだった公共の中・大規模木造が急速に増えました。しかし、全体から見たらまだ少ない。おそらく1〜2割といったところではないでしょうか。

─1〜2割に留まっている理由にはどのようなことがありますか?

促進法の主旨を正しく理解して木材利用に取り組んでいる自治体が少ないのではないかと推察されます。また、構造や防耐火設計上木造でつくることが難しいと初めから諦めてしまっている部分もあると聞きます。実際に自治体によって木造の公共施設を推進しているところと、そうでないところの差は激しいものがあります。たとえば、熊本県は熱心に取り組んでいるようです。当社が関わっているものだと、和水町の小中併設型校舎(龍+いるか+西山 設計集団)と南小国町の庁舎(仙田満+環境デザイン研究所)の2つのプロジェクトが進行中です。

混構造にすればコストは住宅並みに

─中・大規模木造は費用的にあまりメリットがないと思われているのではないですか?

防耐火の仕様によっては費用が高くなることがあります。たとえば木材露しの準耐火構造にする場合、燃えしろ設計にすれば、太い木材が必要になるのでコストアップになります。しかし、やり方次第では低コストで中・大規模木造をつくることが可能です。耐火構造となるRC部分をところどころ設けて木造部分の面積を規定値内に抑えれば、燃えしろ設計が不要な木造露しにすることができ、コストダウンが可能になります。さらに、このRC造部分を耐震コアとして生かせば、木造部分の耐震的な負担を減らすことができ、開放的な木造空間をつくりやすくなります。

このように木造以外の非木造と木造を組み合わせる混構造は、一般にとても多く採用されています。2階床までをRC造にして遮音性能を高めたり、長スパンの床や屋根構造に少しだけ鋼材を組み込むことで木材量を大幅に減らすなど、さまざまな目的と方法があります。プロジェクトの特性に応じて、コストダウンや性能アップのために多かれ少なかれ混構造になることがほとんどで、すべて木造というのはむしろ少ないケースかもしれません。

─公共部門以外からの依頼は増えていますか?

幼稚園や保育施設、事務所、レストランなど、さまざまな用途で増えています。発注者や設計者が建物を木造にすることで、コストや快適性など、なんらかの価値を見出そうとしていることが理由のひとつであるように思います。

建築知識研究所

この記事は会員限定です。
会員登録後、ログインするとお読みいただけます。

新規会員登録
会員ログイン

他のカテゴリの記事を読む