徹底解説[地盤・基礎]山田憲明氏(山田憲明構造設計事務所)(2ページ目)

更新日2016年06月23日

中・大規模の調査方法はボーリングが一般的

─住宅と中・大規模木造建築物では、地盤の調査方法や補強方法も変わってくるのではないですか?

建築物の規模が大きく重くなれば、相応に、周囲まで含めてより広く深く調査し、補強する必要が生じるのは当然です。

具体的には調査の方法と個所数が違ってきます。住宅ではロッドを表層から数メートル貫入させるスウェーデン式サウンディング試験を5〜6カ所行うのが一般的ですが、中・大規模では、ほとんどの場合、 10m以上掘るボーリング調査を複数カ所行います。ボーリング調査では土の採取や標準貫入試験も同時にできるので、どの深さにどういった土があるのか分かります。そのため、より信頼性の高い地盤情報を得られるのです。 費用は、 住宅のスウェーデン式サウンディング試験は数万円程度で済むに対し、中・大規模のボーリング調査は100万円以上かかる場合もあります。しかし、ケース・バイ・ケースです。掘ったら硬い岩盤が出てくることが資料などで前もって分かる場合などは、それほど大規模な調査をしないこともあります。

熊本県和水町の小中併設型校舎[事例1]は、もともと地山の岩盤レベルの起伏が激しく、造成による盛土部分にも建物を建てる計画だったので、10カ所にボーリングを実施しました。この調査によって、必要最低限の地盤改良と杭を設ける設計にすることができました。[図2]

─中・大規模木造の地盤改良方法を教えてください。

住宅では多くの場合、表層の土と固化材を混ぜるなどの地盤改良で事足ります。しかし、荷重が大きい中・大規模木造では、地盤の様態が同等でも杭が必要になるケースが多くなるなど、高スペックになりがちです。

また住宅では、工期・費用ともに効率的なベタ基礎にするケースが多いようですが、中・大規模木造ではほとんど布基礎や独立基礎です。それは荷重とスパンの大きい中・大規模の場合、ベタ基礎にしてしまうとそれだけ大量のコンクリートや鉄筋が必要になり、高コストになるからです。とはいえ、支持層があまりにも深いところにある場合は、そこまで杭を打つよりもベタ基礎にしたほうが、低コストに収まることもあります。

─構造設計をする際の問題点を教えてください。

公共施設の場合、予算の都合で十分な地盤調査ができない場合があります。十分な調査ができなければ地盤に関する情報も十分には得られず、「ここの杭は多く、ここは少なく」といった適材適所の地盤補強ができません。そのため必要以上の杭を打つような過剰な設計となり、無駄な出費につながります。調査の差額は数十万円程度なのに、1千万円単位で工事費が増えることもあり得るのです。だからこそ、設計者は、地盤調査の重要性を発注者に事前にしっかり説明すべきなのです。

事例1和水町立菊水区域小中併設型校舎(設計:龍+いるか+西山 設計集団)

図1 花崗岩上面等高線図[S=1:2,500]

図1 校舎の完成予想図。地盤強度の異なる敷地に
数棟の校舎を連ねた

図2 基礎伏図[S=1:600]

図1
建築知識研究所

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