徹底解説 [ 地盤・基礎 ] 小長井 一男氏(横浜国立大学教授・都市イノベーション研究院(3ページ目)
更新日2015年07月03日
事例3●軟弱地盤を見極める写真
事例4●浦安・液状化地盤沈下マップ
東日本大震災後の千葉県浦安市の液状化の様子を示す地図。白い部分は標高0mで、青い色が濃くなるほど地盤が大きく沈下していることを示す。黄色は造成盛土や地震後、町なかの噴砂をまとめておいた場所など。浦安市では各地で液状化現象が見られたが、白や黄色の場所では液状化による被害が少なかった。ウエブサイト「空から見る震災の記録」(http://shake.iis.u-tokyo.ac.jp/flyovers/)に、東京湾沿岸地域の液状化マップの最新情報を公開している。
地震が起きても被害を最小限に抑える対策を
─東日本大震災では、液状化も大きな問題になりました。液状化しやすい場所を知ることはできますか。蛇行して流れる川筋は砂が堆積し自然堤防をつくります。現在は河川工事でまっすぐになっている場所でも、ひとたび地震が起きて砂が液状化すると、昔の川筋が“あぶり出し”のように現れることもあります。
1993年に起きた北海道南西沖地震では、放牧地のなかに突如、蛇行する砂の筋ができて、運悪くそこに建っていた民家やサイロが倒壊しました。2007年の能登半島地震でも、被害の大きかった輪島市門前町で、旧河道と思われる部分に沿って、液状化による地盤の亀裂が生じ、家屋の倒壊もそこに集中しました[図3]。洪水のたびに砂が堆積してきたような場所も危険です。また、人工的に砂を埋め立てた場所も同じです。砂が軟らかく堆積していますから。
いずれの場合も、埋め立てる前の地図と比べてみることで、液状化しやすい場所かどうか、ある程度はそれで分かります。
─首都圏では、千葉県浦安市の液状化の被害が大きな注目を集めました。浦安の場合は、飛行機にレーザーを積んで標高を調べ、震災前と震災後の標高データを比較した「液状化マップ」をつくってウェブサイトで公開しています[図4]。青い場所は、標高が下がった場所、つまり地盤沈下による液状化の被害が大きかった場所。白の場所は被害のなかったところ、黄色は造成地や液状化で吹き上がった砂を盛り上げたところです。これを見て分かるのは、同じ地域のなかに地盤沈下が生じた場所と、そうでない場所があるということ。白い場所には地盤改良した場所も含まれます。つまり、液状化しやすい地盤であっても、建物を建てる前に地盤改良を行えば、被害を防ぐことができるのです。
─地盤改良は液状化対策にも効果があるということですね。浦安の例を見る限り、かなり効果があるといえます。また、起こった事実をこのように記録しておくことも大事。地図で見て怪しいと思ったら、まずは地盤調査をしてみる価値はあります。危険だと分かれば、地盤改良などの対策もできるわけです。
一方で、危険情報をどのように発信するかも大切です。たとえば、盛土だから悪いとは一概にはいえません。周辺の地形や擁壁の有無なども関係してきます。情報をきちんと判断するノウハウを持っていることが重要になるのです。
また、たとえ地形や地盤が悪くても、適切な対策をとれば危険を回避することが可能です。