徹底解説 [ 地震対策 ] 佐久間 順三氏(設計工房 佐久間代表)

更新日2015年07月23日

地震に耐える住宅の設計と耐震補強

徹底解説 地震対策 佐久間順三氏(設計工房 佐久間代表)

いつ、どこで、大地震が起きても不思議ではない
日本列島。大きな地震の直後こそ、「次」の震災に
どう備えるかの議論が活発化するもののしばらくする
と、そうした意識は総じて薄れがちである。
耐震化の業務で経験豊富な設計工房佐久間の
代表取締役・佐久間順三氏に、住宅における耐震化の
現状と、設計者が今後取り組むべき課題について
話を聞いた。

取材・文=加藤 純 人物撮影=石井真弓
─住宅の地震対策について、現在の傾向を教えてください。

日本各地で、これまで起こってきた大きな地震を受け、耐震に関する積極的な議論や計画的な耐震化の推進、建築物に対する指導などの強化、支援措置の拡充が図られてきました。1995年の阪神淡路大震災を機に耐震基準が見直され、2000年には建築基準法が改正されて木造住宅の耐震仕様が定められました。既存住宅についても2004年に日本建築防災協会によって「木造住宅の耐震診断と補強方法」の改訂版が作成され、2006年には改正耐震改修促進法が施行されました。

そうした整備に加えて、2011年の東日本大震災後に再び地震対策の重要性に注目が集まりましたが、約3年を経過した今、人々の意識は下降傾向にあるように感じています。というのも、現在耐震補強工事をする人が減ってきているからです。地方自治体などが行っている無料耐震診断を受けて耐震補強が必要だと分かった場合でも、補助金が出るにもかかわらず、耐震改修に踏み切らない人が多い。意識の高い建築主はすでに耐震化を終えていて、需要が一巡したこともその要因の1つだと思います。しかし、築30数年以上経過する「新耐震基準」以前の建物がまだ相当数あることからも、次に大地震が起きた場合の被害は大きなものになるでしょう。設計者自身が耐震補強への意識を持続させること、新築の建物に対しても防災意識を日頃から高くもってエンドユーザーに呼びかけていくことが必須といえます。

─新築での耐震性能は、現在の基準で十分なのでしょうか?

現行の建築基準法に則った仕様にしていれば、ほぼ問題ないと思われます。ただし、住宅設計者には構造についての知識不足がしばしば見受けられ、それは問題だと感じます。いわゆる「4号建築物」なら特別な構造の知識がなくても設計できるため、構造上思わぬ落とし穴にはまっていることがあるのです。たとえば、大きな吹抜けを設け、その吹抜けを介して渡り廊下を設けている場合などです。この場合、地震時に渡り廊下でつながれた建物それぞれの揺れ方が異なり、損壊につながることがあります。

また、床剛性の仕様にも不安が残ります。品確法では床の剛性について記述されていますが、建築基準法には明確な記述がありません。必要な剛性が得られる水平構面の面材・釘打ち・根太・根太と梁組の接合についての仕様は、『木造軸組工法住宅の許容応力度設計』(62住宅・木材技術センター)に記載されています。床剛性については、仕様の法的整備を進め、今後は建築基準法でも仕様を定める必要があると思います。

─新築では、2000年の建築基準法改正で地盤調査が事実上義務化となりました。
 その効果や影響をどのように見ていますか?

スウェーデン式サウンディング(SS)試験が一般的になり、地耐力の低い土地では柱状改良や表層改良が行われることも珍しくなくなったことから、以前から問題視されていた不同沈下は激減しています。ただし、東日本大震災のときに広範な地域で問題になった液状化の調査や対策は進んでいないのが実情です。液状化が起こりやすい地盤の条件は、軟らかい砂地で地下水位の高いところです。液状化の発生が想定される地域はある程度明らかになっているので、該当する地域に新築する場合には住宅規模でもボーリング調査で土質試験をし、対策を取ることが必要でしょう。

建築知識研究所

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