徹底解説 [ 地震対策 ] 佐久間 順三氏(設計工房 佐久間代表)(2ページ目)
更新日2015年07月23日
事例1● S邸 耐震補強
図1
図2
写真
1.耐震補強前に仕上げ材を撤去したところ 2.耐震補強として、新たに筋かいを設置したうえで金物で補強した例。その上に構造用合板をN50釘で150㎜間隔に打ち付けた
簡単・確実な材料と方法で必要な耐震性を確保する
─地震対策としてどのような方法を取っていますか?在来木造軸組構法では、構造壁部分に筋かいを取り付けて金物で補強し、構造用合板を打ち付けるなどの仕様にしています。耐震補強でも同じ仕様で、既存の仕上げを撤去したうえでいま述べた補強を行い、再び仕上げを施します[事例1・図1・写真1・2]。在来構法は材料費が比較的安く済み、大工にとって特殊な知識や技術を必要とせずに工事できるため、間違いが起こりにくいのです。またその際、気心のしれた大工に頼むことも大切です。工事が始まって、シロアリや腐朽の問題が発覚しても臨機応変に対応してもらいやすいからです。
一般的に、耐震補強工事に必要な日数は大工2人で2日程度です。耐震補強工事は建築主が生活している状況のまま工事する「居ながら工事」となるので、迅速・確実に進めなければなりません。トラブルごとに1~2週間延びるようでは、信頼を失います。
一般的に耐震補強のコストは1間幅の壁1枚当たり10~20万円、設置個所はX方向・Y方向で合計10カ所ほどなので、全体で100万~200万円となります。
特別な材料や工法を用いる耐震・制震・免震のシステムを導入する場合は、数十年経って地震が来ても確実に働くかどうか、長期間経過した時点での動作も検討が必要でしょう。また、免震システムは一般的にはRC造のように建物の自重が大きくなるほど効果があることも、併せて知っておくとよいでしょう。
─耐力壁の設置の仕方はどのように考えたらよいでしょうか?耐震改修で一般的に目指すべき性能は、現在の新築と同じ強度レベルの評点1.0以上で、私の事務所では評点1.1以上を確保するよう配慮しています。建築主によっては大地震の揺れに対して「倒壊しない」という判定である評点1.5程度を要望する場合もあり、前述の在来構法の仕様を基本として希望にかなうような設計にしています。
耐力壁の配置については、床の剛性が比較的低い木造軸組構法では耐力壁を均等に配することがベストバランスを生みます[図2]。壁を極端に少なくしたいがために壁耐力をやたらに高めるようなことはしていません。キッチンのリフォームも併せて行うような場合には、工事をする際に一緒に補強工事をしてしまうこともあります。建築主の視点に立った実用的な動線を考えるとともに、どのように耐力壁を配置するかを併せて検討します。