徹底解説 [ 地震対策 ] 佐久間 順三氏(設計工房 佐久間代表)(3ページ目)

更新日2015年07月23日

─耐震改修を進めるうえでの問題点を教えてください。

「すでにリフォームをした」という住宅でも、実は耐震リフォームが必要なケースを見受けます。私が手がけた物件では、キッチンや浴室の大がかりなリフォームを数年前にしたにもかかわらず、壁に不具合が発生したと相談を受けたケースがありました[事例2・写真3・4]。現地調査をして構造材に問題があると判断し、本格的に壁を剥がしていくと、いくつかの個所で深刻なシロアリ被害に遭っていることが判明したのです。残念ながら、自分が専門とする分野の仕事しか行わないリフォーム業者がまだ多くいます。その家では、窓を新たに開けるために筋かいが切除されていました。

また、構造材に影響する雨漏りや湿気への対策は、新築・リフォームを問わず徹底したいですね。こうした不具合がシロアリ被害や腐朽につながり、構造材として役立たなくなってしまうからです。



耐震の重要性について
設計者ももっとアピールを

─長期にわたって住み続けられる住宅として、いま改めて木造が注目されています。
 耐震という視点からはどのように見ておられますか?

前述のシロアリ被害に遭った住宅でも、また築100年の木造住宅をリフォームした際にも、傷んだ部材を取り除いて適切な部材と接合方法でつないで再生させました[事例3・写真5~8]。これからきちんとメンテナンスをしていけば、長くもつことでしょう。木造住宅は適切なメンテナンスと改修で、長期にわたって安全に暮らせるのです。日本建築防災協会では現在、被災度区分判定の改訂作業を行っているところです。地震による建物被害の5段階「軽微/小破/中破/大破/倒壊」のうち、現在は大破以上なら取り壊すことになっています。改訂後の判定では、大破したものでも、木造の場合は取り壊さなくてもよいとされる見込みです。木造は、たとえ大きく傾いたとしても、手を加えて修復すれば再生が可能だからです。

事例2Y邸 シロアリ被害

Y邸 シロアリ被害1 3.壁のタイル目地が剥がれ落ち、構造材に不具合があることが察せられた 4.壁を撤去したところ、柱にシロアリ被害が認められ、構造材の役割を果たしていなかった

事例3O邸 伝統構法住宅のスケルトンリフォーム

O邸 伝統構法住宅のスケルトンリフォーム1 5.6.築100年の木造住宅をスケルトンリフォームし、併せて増築を行った二世帯住宅。足元は1階床組をつなぎ、下に底盤コンクリートを打設。土台部分と底盤を緊結した 7.8.構造部材の足元の腐食部分は切除し、木材を継ぎ足して再生させた
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