地盤の違いが明暗を分けた熊本地震被災地を地盤のプロはどう見たのか?
更新日2016年08月31日
震源地となった益城町の家屋倒壊や、南阿蘇の土砂災害が注視される中、地盤ネット総合研究所では本震直後から3回にわたり、地盤と家屋の関連に着目して緊急調査を実施。
長年、地震が少ないエリアだといわれており、防災意識が薄れていた九州を襲った今回の震災では、1度目は耐えたが2度目で崩壊した住居や、道一本をはさんで明暗が分かれた被災地の様子を目の当たりにしたという。
かねてより「住宅が100%の力を発揮するには、よい建物をよい地盤に建てなくては」と訴える同社が見た、発災直後の現地の状況と、調査結果を踏まえた「災害被害と地盤」の密接な関係についてお話を伺った。
本震直後に入った現地で軟弱地盤に集中的な被害の発生を確認
建築知識研究所─4 月に発生した熊本地震は、地震大国・日本にあってもかなりイレギュラーな事案だったそうですが、まず、どこがこれまでの地震と違うのかを教えてください。地盤ネット総合研究所―熊本地震は、まず14日に震度7(M6.5)の地震を観測しました。震源の深さが11kmと浅いこともあり、この時点ですでに老朽化した住宅などに大きな被害が出ており、気象庁も発生当初はこれが〝本震〟と考えていました。しかしその28時間後、16日未明に再び震度7(M7.3)という、さらに大きな地震が発生し、気象庁は後に、こちらが一連の熊本地震の〝本震〟であり、14日に起きたのは〝前震〟だったと訂正しています。
こうした例は、熊本地震のような活断層型地震では観測史上初、そして震度7の揺れが同一エリアを連続して襲うのも史上初のケースということで、地盤のプロである当社としては、緊急に現地調査が必要だと考えました。
地盤ネット総合研究所―熊本地震に関しては、本震度直後から3回に渡って現地入りし、段階的な被
災状況の調査を行いました。
①4月16日 第1次調査
益城町の地盤の弱いエリアでの建物被害を確認。一部で地盤液状化の発生を確認。
②4月20日~23日 第2次調査
熊本市内を中心に広範な液状化被害が生じていることを確認。
一部で地盤液状化に伴う流動化により、50cm以上の沈下を確認。
③6月15日~17日 第3次調査
益城町および熊本市の被害集中地域の自社補償物件にて、周辺の被害の大きい家屋との比較、地形地質・地盤条件の違いに着目し、状況調査を実施。
まず震源となった活断層に近く、一番被害の大きかった益城町を。続いて液状化現象が発生した都市部の熊本市街をエリアとして調査した上で、当社が地盤調査を担当した物件(自社保障物件)と、その周辺の被災状況調査を行ったという流れです。