「知らないと損」な災害リスク情報を、すべての人に

更新日2016年12月08日

「知らないと損」な災害リスク情報を、すべての人に ~地盤会社の社長が、自分で不動産を買って気づいたこと~

住宅地盤の専門医と呼ばれ、家づくり・土地取得を検討する人々に安心を提供する地盤ネットホールディングスが挑む、業界の常識にとらわれないサービスを紹介している本コラム。第2回のテーマは、同社を率いる山本強代表が、自らのマイホーム購入によって気づいたという「災害リスクの見えにくさ」だ。
地盤のプロなのだから、さぞ安全・安心な土地を手に入れられたことだろう……と思いきや、土地探し・土地選びの過程では、プロでさえ首をかしげるような曖昧な情報や、業界特有の暗黙のルールに幾度もつまずいたという山本氏。その経験から立ち上げた新サービスについて、話を伺った。

安全を提供するはずの地盤会社社長が被災するわけにはいかない

建築知識研究所─今回のテーマは「災害リスク」。これはエリアや土地の「災害リスク(起こりやすさ)」をチェックするということでしょうか。

地盤ネットホールディングス(以下、地盤ネット)―はい。実をいうと、この「土地・街に潜む災害リスク」が気にかかるようになったのは、数年前に私自身が不動産(マイホーム)を購入しようとしたのがきっかけです。
当初、家族と相談しながらリストアップした候補エリアは、現在マイホームがあるのとは違う街でした。そこは過去に災害が発生したこともあるけれど、利便性が高く環境のいい魅力的な街で、家族も大いに気に入っていました。
しかし、ふと頭をよぎったのは、東日本大震災などで被災して住宅に損害を受け、当社に相談してこられたお客様の姿です。彼らにプロとしてアドバイスしている地盤会社の社長が、万が一にも被災するわけにはいかない。災害リスクなども含め、もっとしっかり情報を集めてから決定しよう……と考えたのです。
この判断が正しかったことは、今年4月に発生した熊本地震の現地調査に入った際にも、改めて感じました。今回、被害が激甚だった益城町で当社の調査・補償対象となった物件で特に興味深かったのが、同じ良好地盤に建てられた3棟の新築物件のうち、1棟だけが被災して解体されていたことです。
被害があった物件と、無事だった2棟。なにが命運を分けたのかというと、建物の長辺・短辺の向きが違ったことでした。被災した家は長辺が南北に面しており、今回の被害拡大の原因となった益城町を東西に走る分岐断層から伝わった地震動に対して、耐震効果を発揮しきれませんでした。一方、無事だった2棟は長辺が東西に面していたため、地震動をうまく吸収し、被害を抑えることができたのです。
震災後にはよく「道一本へだててまったく被害が違った」という話を聞きますが、こうした地盤特性をきちんと理解して3棟とも設計をしていれば、今回の被害は防げたのだという実例を目の当たりにして、やはり家づくりには地盤のエキスパートの視点が必要だと感じました。

建築知識研究所―確かに、有事の際に多くの人が頼りにするのが地盤会社ですから、プロ中のプロの自宅が被災しては面目が立ちませんね。

地盤ネット―その通りです。ところが、改めてよく考えてみると、かつてマイホーム選びを実体験する前の私は「住宅地盤」のプロではあるけれど、「個別の土地・街に潜む災害リスク」については、まだまだ知らないことがたくさんありました。
埋立地や海岸沿いなら液状化しやすい、山際の造成地や川沿いなら土砂や浸水の危険性が…といった、一般的な知識は、もちろんあります。しかし、いざ自分が買おう、住もうと思った街・土地に、実際どんなリスクが潜んでいるかを調べるのが、非常に難しかった。
消費者が一生モノの買い物をするための検証が、こんなに大変だとはと驚くと同時に、これはきっとなにか構造的な問題があるのだろうと直感しました。

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